北三陸鉄道リアス線 袖が浜駅を訪ねてみた

鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所] 三陸鉄道北リアス線 堀内駅など
2013年4月~9月にNHKで放送された連続テレビ小説『あまちゃん』は、北三陸鉄道リアス線沿線が舞台となり、ヒロインの天野アキは「袖が浜駅」が最寄りの袖が浜海岸の漁師町に住んでいるという設定になっている。しかし、そんな名の鉄道や駅が存在しないのは、当サイトの読者なら百も承知であろう。
そこで「袖が浜駅」と袖が浜海岸のモデルになった場所の位置関係を見聞したく訪ねてきた。

もしこのドラマの舞台となった地名の場所が実在していると思っている方には夢を壊さないためにも、ネタバレ注意と一言添えておこう。

三陸鉄道北リアス線 堀内駅に、記者が訪れた時には「あまちゃんのロケ地です」の横断幕が張られていた。ちなみに、奥が北側で久慈駅方。右が東側で海になる。
三陸鉄道北リアス線 堀内駅に、記者が訪れた時には「あまちゃんのロケ地です」の横断幕が張られていた。ちなみに、奥が北側で久慈駅方。右が東側で海になる。


駅のプラットホームから南側の宮古駅方を眺めると、トンネルが口を開けている。
駅のプラットホームから南側の宮古駅方を眺めると、トンネルが口を開けている。

「袖が浜駅」としてロケに使用されたのは三陸鉄道北リアス線 堀内駅。「北三陸駅」という設定の久慈駅からは南に5コ目の駅で、劇中ではこの駅の直近に袖が浜海岸があることになっている。なので、それならば天野アキの母が久慈駅で営む喫茶&スナックに「北の海女」の人々が気軽に現われることなども可能だろう。
というわけで、そんな距離感覚と時間軸を勝手に抱きながら堀内駅に降り立ってみた。すると確かに駅から海の方向を眺るとそれらしい漁港は窺える。けれども、劇中にしょっちゅう登場していた、袖が浜海岸のシンボルともいえる夫婦岩が見あたらない。

駅から東側の海を眺めると、そこに漁港はあるが、夫婦岩はない。
駅から東側の海を眺めると、そこに漁港はあるが、夫婦岩はない。

実のところ、劇中では「袖が浜駅」と袖が浜海岸は別の場所で撮影されている。「袖が浜駅」に設定されているのは三陸鉄道北リアス線 堀内駅だが、袖が浜海岸に設定されているのはこの駅から北へ約12.5kmの地点にある小袖海岸になる。そんなことは『あまちゃん』に詳しい方からすれば、いまさらの話かも知れない。
だが、小袖海岸へリーズナブルに公共交通機関で行くためには1日数本しかないバスを利用するほかない。なので、もしも場所を勘違いしている人がいたら、知っておいてもらおうと思い、あえて記事にさせていただいたしだいだ。
じぇじぇじぇ、それはアナタのことじゃないの? っと言われそうだが。

堀内駅から北方約12.5kmに位置する小袖海岸に辿り着き、夫婦岩にやっとお目に掛かることができた。なお、2016年10月現在、久慈駅もしくは陸中野田駅と小袖海岸を結ぶ路線バスは1日に3往復しかない。 http://www.iwate-kenpokubus.co.jp/uploads/2704_kosodesea.pdf
堀内駅から北方約12.5kmに位置する小袖海岸に辿り着き、夫婦岩にやっとお目に掛かることができた。なお、2016年10月現在、久慈駅もしくは陸中野田駅と小袖海岸を結ぶ路線バスは1日に3往復しかない。
http://www.iwate-kenpokubus.co.jp/uploads/2704_kosodesea.pdf

ちなみに、「あまちゃんの舞台」としてドラマのロケ地ガイドが岩手県久慈市の観光情報サイト内ですでに公表されている。
https://www.city.kuji.iwate.jp/kanko/roke/amachan/location.html
それもあり、そろそろ頃合とも思ったのでネタバレさせていただいた。
せっかくなので、田野畑駅の近くにある水門の制御棟をお見せして記事を締め括ることにしよう。

天野アキの親友、足立ユイが住んでいる家の最寄り駅の「畑野駅」に設定されているのは田野畑駅になる。この駅の南東350mほどのところには、三陸鉄道36-100形気動車を模した、シャレた水門の制御棟が建っている。
天野アキの親友、足立ユイが住んでいる家の最寄り駅の「畑野駅」に設定されているのは田野畑駅になる。この駅の南東350mほどのところには、三陸鉄道36-100形気動車を模した、シャレた水門の制御棟が建っている。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。