信州千曲のJR姨捨駅スイッチバック線路を眺める

ナゼそこに!? いまなお現役…山の斜面に開設された通過可能形スイッチバック駅

[場所]JR篠ノ井線 姨捨駅

信州松本平と善光寺平(長野盆地)の間、犀川と千曲川に挟まれた地域に、聖山・冠着山(姨捨山)などを擁する聖山高原が広がっている。JR篠ノ井線で善光寺平から松本平方面へ向かうと、この聖山高原の北東側斜面の中腹の上り勾配に通過可能形スイッチバック駅の姨捨駅がある。

姨捨駅の本線部分を走る383系「特急しなの」。手前(左)が長野方、奥(右)が松本方。
姨捨駅2番線ホームから眺めた本線部分。手前(左)が長野方、奥(右)が松本方。電車は383系「特急しなの」。
スイッチバック駅は国内各地に数々あれど、急勾配制覇目的(通過不可能形)以外の、駅開設のために山の斜面中腹(片側の眺望が良いの意)に設置された所謂「通過可能形」スイッチバック駅は少ない。かつては国鉄中央東線勝沼駅(当時)などもそのスタイルだったが、勾配の途中の本線にプラットホームを移設するなどで、いまの時代には、この度紹介する姨捨駅と、あとはJR土讃線新改駅くらいしか見当たらず(個人の感想です)稀少と思い、この姨捨駅がどのようなスイッチバックスタイルなのか…実地を眺めるべく訪ねてみた。

姨捨駅の跨線橋からの北西向き(長野方)の眺め。線路は左から1番線、2番線、本線。電車は383系「特急しなの」。跨線橋はガラス張りのため、右上に写り込みがあるのはご愛嬌(汗)。
姨捨駅は、1900年(明治33年)に官設鉄道 篠ノ井線の篠ノ井-西条 間開通時に開設された旅客・貨物取扱駅だが、1960年に貨物の取扱を廃止している。そして、1987年4月1日にJR東日本の駅となっている。
姨捨駅プラットホームからは眼下に善光寺平が見渡せるコトは有名であろう。このこともあって、ここからの夜景が2012年8月1日には「日本夜景遺産(自然夜景遺産)」に認定されている。

姨捨駅を、松本側から長野向きに眺めた下り列車からの前方展望。長野行は1番線に入るため手前の分岐器のトングはこの向きになる。右の信号機は2個とも引き上げ線のモノなので共にR現示。
上写真は松本側から長野方向を眺めた下り列車からの姨捨駅の前方展望であるが、この訪問では長野側から松本方へ向かっている。それでは、まずは上り列車に乗車していこう。

上り列車の姨捨駅へ長野側直前から到着までを眺める

JR篠ノ井線は、線路的には篠ノ井駅を起点として、塩尻駅が終点になっているが、列車番号的には逆に 篠ノ井→塩尻 へ上り列車の列番が振られているので、本記事においての上り・下りはコチラ列番の方に従っていることを申し述べておく。
なお、この項は時系列を大切にしているため、本文を極力減らし、写真のキャプションがメインにて記事を組んでいる点をご理解いただきくお願いしたい。

■姨捨駅到着の長野側直前から引き上げ線までの前方展望

姨捨駅舎の北60mくらいの位置にある道徳踏切付近からの松本方の前方展望。奥の信号機は場内信号機で、左の引き上げ線のモノがY現示になっているのが判る。右上の建造物は姨捨駅の跨線橋。
本線をさらに進むと、分岐器のトングが引き上げ線向きになっていることが判る。ちなみに直線側が本線。
引き上げ線に入った電車は2両編成だとこの辺で停止する。
引き上げ線停車中にも車窓北東側からは善光寺平が望める。ちなみに手前の雑木林の向こうに棚田があることをひとまず記しておく。
■駅南東側(松本方)の道からの駅到着風景

左から本線を上ってきたE127系松本行普通。
そのまま引き上げ線へ進入。
そこからバックして2番線へ進入。
当然ながらテールランプは点いたままだ。
そして2番線プラットホームへと到着する。
■松本行上り普通電車姨捨駅発車

松本行普通発車。
発車後は手前の片渡り線にて1番線に入る。
その1番線から本線へと進入する。
松本方面2番線ホームを発車した普通電車は、そのまま進行して本線に入るのではなく、一旦渡り線を通り、1番線側から本線へ進入する徹底ぶりが、信号方式の都合に拠るのだろうけど、サスガと思う。

姨捨駅跨線橋より眺めた駅の南東側(松本方)。1番線に停車しているのはE127系長野行普通。左の本線を走っているのは383系「上り特急しなの」。

姨捨駅の施設を眺める

現在の姨捨駅駅舎は2010年にリニューアルされた建物。そして、プラットホーム上には、善光寺平の眺望を楽しむための案内板などが設置されているので、それら施設・設備を眺めていこう。

姨捨駅駅舎。いわゆる山側に建っている。
2番線に立つ駅名板。ラインがスイッチバックを表しているのはサスガ。
2番線ホームからの善光寺平の眺め。写真中央やや右上の鉄道高架線は北陸新幹線の千曲川右岸付近。手前の電線は本線の架線。
2番線ホームに設置された「姨捨駅 展望案内図」。とりあえず「名勝 長楽寺地区」の文字を覚えておいていただきたい。
こちらはレリーフ細工の「姨捨からの眺望」プレート。
2番線ホームのベンチは、善光寺平側を向けて設置されているので、列車を待っている間には眺望を楽しめるのがイイね。
1番線ホームに建つ「ラウンジ更級の月」。TRAIN SUITE 四季島の運行開始に合わせて建設された建物になる。
右は1番線ホームに立つ松尾芭蕉「おもかげや姨ひとりなく月の友」の句碑。左は「投句箱」。
駅舎外側の左脇に立つ「千曲市ご案内」。
上写真の案内板にも記されているように、姨捨は「名月の里」と称されている。これは「田毎の月」と謳われた、姨捨の棚田に映る月をいい、1999年に国の名勝に指定、さらに同年に姨捨棚田が「日本の棚田百選」に選出されている。

姨捨駅北東に広がる棚田を訪ねる

上述したように、姨捨の棚田は名所スポットということもあり、せっかくなので訪ねてみた。

姨捨駅駅舎から見て南東側(松本方)400mほとの地点にある一本松踏切を渡ったスグの場所から眺めた姨捨棚田。稲の成長は9月初旬の状態。後述する「田毎の月」の観月スポットがある長楽寺へは姨捨駅駅舎から見て南東側(松本方)200mほどに位置する大池踏切からの方が近い。
姨捨棚田の中に立つ「姨捨の棚田」の説明板。
なお、棚田に映る月である「田毎の月」が観られるのは、棚田に水を張る田植えシーズン直前~稲が育つ前までの時期なのは、日本にお住まいの方ならお解りになっていることだろう。
ただし、「姨捨棚田」は姨捨駅の北東に広がっているのと、駅より低い標高に位置しているので、月出の方角や駅からの目線の先に雑木林がある関係上、「田毎の月」を姨捨駅プラットホームより望むことはできない。
観月スポットとしては、姨捨駅から地図上で北東300mくらいの場所にある長楽寺が有名になっている。

上り列車の姨捨駅発車を松本行普通電車から後方展望で眺める

「スイッチバック線路を眺める」がテーマなので、姨捨駅の松本側の線路を、この度は後方(長野方)展望にて眺めていこう。

姨捨駅2番線から、松本へ向けて後方展望にて発車。
15枚上の写真にても説明しているが、松本方面への発車は、プラットホームを出てスグの片渡り線にて1番線へ入るので、この分岐器のトングはこの向きになっている。
引き上げ線の車止め付近。天気が前後の写真と異なっているのは気にしてはいけない(笑)。
上の車止め付近から松本方(南側)30mほどの地点に立つ場内信号機。後方展望なので共にR現示。奥の跨線橋は用水路のモノ。
元々は、本記事において姨捨駅北北西約4kmの位置にある桑ノ原信号場の写真も併せて載せるつもりであったが、姨捨駅の紹介に写真スペースをかなり使ってしまったため、後日に機会を見て掲載することにした。なのでそちらはしばらく待っていただけたら幸いだ。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。