三岐鉄道三岐線に昭和40~50年代頃の西武電車の面影を追う

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[場所]三岐鉄道三岐線 近鉄富田-西藤原

チョット古いネタになるが、三重県の三岐鉄道では三岐線の801系803Fを西武鉄道旧カラーのディープラズベリー×トニーベージュツートンに復元して、2019年4月21日から走らせている。
また801系805Fが西武鉄道カラーのレモンイエローになって2018年4月26日から走っているので、運が良ければ、両カラーの車輛の交換シーンを見ることができる。
ちなみにタイトル写真は、山城駅で交換時に並んだ801系の赤電色編成とレモンイエロー編成。それと記事は2社に跨がっているため本文では車番等に適宜社名を冠した標記をしているが、写真のキャプションでは三岐鉄道に関しては車番のみにさせていただいた。

保々駅の富田寄り(南東側)に並ぶ元西武鉄道の電車たち。左から赤電色801系803F、101系103F+105F、レモンイエロー801系805F。
同じ留置編成を反対(南東)側の踏切から眺めたところ。左のELはED455。
三岐線の801系は元西武鉄道の701系なのは皆さんご存知だろう。三岐線にいる元西武701系の三岐801系は801F・803F・805Fの3本で、さらに851系の片側(近鉄富田寄り)も元西武701系の低運転台車のスタイルを持つ。
その、なんとモロ当時モノの電車にディープラズベリー×トニーベージュツートン(以後「赤電色」と標記)カラーを施したのだから、三岐鉄道のサービス精神には感激頻り。なので、アラフォー以上の首都圏在住者にとっては、そんな懐かしさを感じると思われる西武鉄道復刻色電車に会いに、三岐線へ行ってきた。では、赤電色801系803Fから眺めていこう。

■赤電色801系803F

801系803F赤電色の勇姿。左が西藤原方で、先頭のクハ1804は始めからクハの車輛。山城-保々
三岐鉄道三岐線801系803Fは、西武鉄道に居た頃は西武701系771Fの元4連だった車輛で、当時の車番は西武新宿方からクハ1771+モハ771+モハ772+クハ1772。そのモハ771にクハ1771の前頭部接合(模型でいう顔面移植)して3連化する改造を西武所沢工場で施して、1992年7月に三岐鉄道へ入線した。三岐鉄道での車番は近鉄富田方からクモハ803+モハ804+クハ1804。
なお、台車や機器のことまで記すと話が長くなるので、気になる方は他のサイトなどを参照していただきたくお願いする。

801系803F赤電色の後追い撮影。右が近鉄富田方で、最後尾のクモハ803はモハへの顔面移植車。山城-保々
保々の車庫に留置中の803F赤電色。左が近鉄富田でクモハ803。ドアがステンレス地色なのも再現している。
保々駅の車庫で元西武の電車に囲まれる赤電色。左から101系101F、851系851F、赤電801系803F、101系103F。左の101Fは先日の検査で旧三岐カラーになり2020年4月30日出場、5月1日から営業運転に付いている。
西武赤電色は、1960年に新造の西武451系と、この年以後に検査出場した車輛から採用されたカラーリングになり、新宿線系統では1985年まで見ることができた。赤電色が最後まで残ったのは多摩湖線国分寺-萩山間の西武351系だったが1990年に廃車になり同時に西武線上からは消えている(イベントを除く)。
ところで先述の西武451系だが、1981年12月から1982年3月にかけて三岐鉄道に入線して、三岐線で2連になり601系として601F・603F・605Fの3編成が活躍していた。しかし601Fが1992年5月に、603Fが1997年6月に、605Fが1997年10月にそれぞれ廃車解体されている。

■レモンイエロー801系805F

801系805Fレモンイエローの勇姿。左が西藤原方で、先頭のクハ1852は始めからクハの車輛。山城-保々
三岐鉄道三岐線801系805Fは、西武鉄道に居た頃は西武701系781Fの元4連だった車輛で、当時の車番は西武新宿方からクハ1781+モハ781+モハ782+クハ1782。そのモハ781にクハ1781の前頭部接合して3連化する改造を西武所沢工場で施して、1997年10月に三岐鉄道へ入線した。三岐鉄道での車番は近鉄富田方からクモハ805+モハ806+クハ1852。
なお、台車や機器のことまで記すとこちらも話が長くなるので、気になる方は他のサイトなどを参照していただきたくお願いする。

保々-山城の田園地帯を駆ける805Fレモンイエロー。右が近鉄富田方で、先頭のクモハ805はモハへの顔面移植車。
805Fの近鉄富田方クモハ805のアップ。顔面移植した違和感は全くない。保々-山城
805Fの西藤原方クハ1852。番号が50番台なのは、屋根等801系と異なり、性能的に851系のため車番1852が付せられている。山城-保々
805Fの西藤原方からのサイドビュー。ドアがステンレス地色なのがサスガ。山城-保々
上写真とは反対側面(富田基準でいうところの海側)の西藤原方からの斜め前。電連はダミーとの噂。保々駅
西武電車のレモンイエロー(黄色)は、まずそのレモンイエローとウォームグレーツートンが1969年3月5日に営業運転を開始した西武101系低運転台車(試験塗装は半年前の9月に西武701系747Fに塗られている)に使用された。これがレモンイエロー1色(ステンレス部等を除く)になったのは1976年8月に冷房化改造が竣工された西武701系703Fからで、1977年2月11日に登場の2000系もそのカラーリングを踏襲している。
その後は西武101系低運転台車もレモンイエロー1色へ1996から塗装変更が行われ、1999年に完了している。
お恥ずかしい話になるが、筆者は1970年代頃の西武電車の一般車体色は黄色→冷房車、赤電色→非冷房と一人思っていた。だがしかし、いまこの記事を書くための資料を読んでいると、西武701系最初の冷改車は731F1975年10月竣工とある。なのでその731Fと、1976年8月にレモンイエローで竣工の703Fの間に竣工した701F・705F・733F・749F・751Fの6本は赤電色で出場したことになる。また西武101系の低運転台車の中には非冷房で登場した車輛もあった。ということは西武電車の黄色=冷房車ではないのであった。←筆者自身に言い聞かせている(汗)。
三岐線に話を戻そう。
西武カラー復元車の車内には「西武701系ヒストリー」を記した中刷りが下げられている。

801系803F西武赤電色復元電車の車内には、西武電車の懐かしいカラーリングの写真で飾られている。そして左にはヒストリーも…。
こちらは801系805Fレモンイエローの車内に掲示されたヒストリー。
この辺も見ておきたい所だね。

復元カラー以外にも元西武鉄道の電車がズラリ

三岐線の旅客電車はカラーリングこそ三岐鉄道オリジナルだが、その出自はすべて西武鉄道なので、復元カラー車輛以外だって西武ファンにとっての見所はたくさんある。
例えば三岐851系851F。この電車は先にも記しているが、近鉄富田方は西武701系の顔なのに、西藤原方は西武新101系の顔をした不思議な編成を組んでいる。そうなった原因はともかく、西藤原方の三岐クハ1881形1881は元西武新101系クハ1238なので、雨樋の違い等から西武の701系と新101系のサイドの相違点を見分けるサンプルとして最適だったりする。

851系851Fで、右が近鉄富田方。この低運転台側2両は元西武701系だが805Fクハ1852の仲間50番台なので車番851を名乗る。そんなクモハ851は顔面移植車で、元西武モハ701-89にクハ1789の前頭部接合。中間のモハ881は元西武モハ701-90になる。保々-山城
851Fの西藤原方クハ1881。以前はこの位置にクハ1851がいたが事故廃車により、代替に西武新101系クハ1238を改造したクハ1881を編成に組入れている。
山城-保々
あと、筆者が三岐線を訪れた感想になるが、復元カラー電車は共に3連なので朝の通勤通学時間帯を過ぎると保々駅で2連と車両交換する運用を少し見掛けた。撮ろうと思っていた電車が目の前で入庫してしまうのは案外ガッカリするモノである。しかし三岐鉄道なら対象を貨物列車メインに変更することが容易にできる。
ちなみに三岐鉄道では1日乗り放題パスを発売しているので、コレの利用ならその辺も臨機応変に対応できるのでありがたい。

三岐鉄道1日乗り放題パス 大人1,200円・小児600円(写真内の価格は消費税増税前なのでNG)。発売箇所は全線有人駅のみ。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。