銚子電鉄の転轍機が岩崎レール…怪情報?を信じて訪ねてみた

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[場所]銚子電鉄 銚子-外川

千葉県の銚子電鉄は、太平洋側の犬吠埼を巡る総延長6.4kmの地方私鉄で、2020年4月30日アップで「令和に残る奇跡の情景…ローカル私鉄タイプ直接吊架式電車線」を紹介しているが、その中でチラッと触れた同社制作映画の「電車を止めるな!」が、2020年8月28日封切り、同日からいよいよ一般公開が始まる。
そんな時期に合わせようと、銚子電鉄を記事にするネタが何かないかを考えていたら、鉄道バーの飲み仲間から怪情報が入ってきた。

銚子電鉄の見所といえば頭上にある「令和に残る奇跡の情景…ローカル私鉄タイプ直接吊架式電車線」と当サイトで春に紹介しているが、この度のネタは地面。写真は銚子駅の直接吊架式電車線の起点部分。
入ってきた怪情報は「仲ノ町駅西側に岩崎レール商会のダルマ(錘付)転轍機がある。」なる内容で、もしそれが現役だったら貴重だなと思い訪ねてみた。

仲ノ町駅を銚子方電車内から眺めたトコロで、分岐器3番目がダルマ転轍機なのが窺える。車輛は左から2000形デハ2002+クハ2502、2000形デハ2001+クハ2501の各2連、デハ1002(車番2040は営団地下鉄丸ノ内線時代の元番号)。

■仲ノ町駅

銚子電鉄の銚子駅から一つ目の駅が仲ノ町駅。分岐器の転轍機は西側(銚子方)からだと、1個目の本線からの側線分岐器がリバー式手動転轍機で、2個目の側線からの車庫線分岐器が標識付転轍機なのでコレではない。そして3個目の車庫線の分岐器がやっとダルマ転轍機を備えていた。

上写真3番目のダルマ転轍機のアップ。道路からの撮影だが、こちら側だと銘が見えない。
ということでこの転轍機に目を付けたのだが、一般人が普通に近寄れる場所にはない。でもまあ望遠レンズでならどうにか銘が見れるかなと思い、とりあえず仲ノ町駅で下車して道路添いから眺めにいったのだが、メーカー名など発見できずであえなくゲームセット。
意気消沈して仲ノ町駅に戻り、気を取り直して、何の気なしに側線に停まっていた2000形デハ2002の床下を眺めていて見つけたのが下の写真の転轍機になる。

デハ2002の床下越しに垣間見た「東京月島長谷川工場製作」の銘がある転轍機の廃品。グーグルマップによるとココには転轍機は5個保管されているが、右の転轍機には銘がないので、他の転轍機にも「東京月島…」が入っているとは限らない。
上の写真の転轍機には「岩崎レール工業」もしくは「岩崎レール商会」の銘はないが、「東京月島」の文字によりコレが岩崎レール工業製であることが推測できる。なぜなら、岩崎レール工業は東京都中央区の月島に工場があったので、この銘が入れられたのだと思われる(間違ってたらゴメンなさい)。ただし、「長谷川工場」の文字が何を意味しているのかは解らない。まあ転轍機的骨董価値はありそうだ。
そして、上々写真の現役転轍機と、銘ありorなしの形態を見比べてみたのだが判別不能であった。
せっかくなので、仲ノ町駅の普通の見所の写真も載せておこう。

仲ノ町駅舎内に展示されている800形デハ801の模型。旧標準色になっている。
銚子電鉄標準色に塗られた「銚電楽く楽く宅配サービス」の車輛。運がイイと車庫脇に停まっている。

■髪毛黒生駅

なんかせっかく転轍機ネタで銚子電鉄まで来たので、他の駅の転轍機も見てみようと思い、次は交換駅である髪毛黒生駅へ向かった。なおこの旅では弧廻手形(1日乗車券)を使っているので、行動的には臨機応変に動ける状況にある。

ふりがなはサスガに正式名。
髪毛黒生駅は昔は「笠上黒生」を名乗っていたが、2015年にスカルプケアアイテムで有名な株式会社メソケアプラスがネーミングライツを取得してこの愛称を冠した。なんかダジャレっぽくて面白いので、本記事ではこれを踏襲させていただく。
では、髪毛黒生駅北西側(銚子方)の分岐器から見ていこう。

銚子方の転轍機。公道の踏切からだと、ココまでが限界。
しかしながら、髪毛黒生駅北西側の転轍機は間近で眺められるトコロはない。
なので、転轍機のアップは車内からの写真にてお見せする。

というわけで電車内から撮ってみた。後方展望で、分岐器通過直後なので発条転轍器のトングが丁度中間になっている瞬間だ。
上の写真を見て、分岐器が発条転轍器(スプリングポイント)なのがお解りいただけるだろう。
しかしこのアングルからだと転轍機の銘が読み取れないので、その辺は駅南東側の転轍機探訪でお伝えしたい。

外川方の転轍機。外川寄りの構内踏切からだと、ココまでが限界。
髪毛黒生駅南東側(銚子方)の分岐器も発条転轍器になっている。この転轍機は駅から眺めるには少し遠いが、近くまで行ける私道があるので、そこから転轍機のアップ写真を撮ることができる。

こちらの転轍機は私道から間近に見ることができる。線路側の銘には「▽SANKOSHA SSP-2.PAT.」の文字がある。
「▽SANKOSHA」の銘から製造は株式会社三工社なのが判明する。そして「SSP-2.PAT.」の文字から「SSP2形」ということが解る。
また、北西側の転轍機にも「▽」マークがチラリと窺えたので、おそらくそちらも同じ転轍機を備えていると想定できる。
髪毛黒生駅の見所(と言えるかは人それぞれだが!?)をもう一つ。上りホームの裏にユ101、いわゆる「澪つくし号」に使用されたトロッコ客車が留置されている。

上りホーム裏に留置されているユ101。映画「電車を止めるな!」のサブタイトルが「~呪いの6.4km~」で、テーマが心霊電車らしいけど、コレも夜に見たら心霊客車(笑)っぽくて十分に怖そう。
ユ101は元国鉄ワム80000を東京都葛飾区の国鉄新小岩車両センター(当時)で1985年にオープンに改造した車輛。2007年に休車となり、同駅裏に留置され続けている。

■ありがとう外川駅

外川駅は銚子電鉄の終着駅だが、機回し線的設備があるので分岐器が2個存在する。ここの転轍機は2つ共に道路から近い位置に設置されているので眺めやすい。

外川駅の銚子方にある転轍機は公道の踏切から間近に見られる。車輛は3000形2連。
上の転轍機を線路対面の駐車場から眺めてみた。線路側の銘には、髪毛黒生と同じ「▽SANKOSHA SSP-2.PAT.」の文字がある。

ところで、小見出しに「ありがとう」の文字が入っていることに気になった方がいるのではないだろうか。コレは「ありがとうと言ってもらえる会社になりたい」という銚子電鉄の姿勢に共感した、千葉県松戸市の早稲田ハウス株式会社が、ネーミングライツにより命名権を取得して付けた愛称で、外川駅を訪れる人が「ありがとう」の気持ちをいつまでも忘れず幸せになってくれることを願って冠したそうだ。

車止め側の転轍機…といきたいトコロだが、記事冒頭の流れから架線終点の写真を選んでみた。電車線端部の張力調整装置は銚子駅共々バネ式を採用している。電車は800形デハ801保存車。その右に転轍機がわずかに見える。
さて、そんなこんなで外川駅まで6.4kmを、筆者は何事もなく着いてしまったが、映画「電車を止めるな!」ではその間に何か呪いの現象が起こり始めるらしい。とりあえずの映画封切りは2020年8月28日に千葉県銚子市犬吠埼ホテルと千葉県千葉市稲毛海浜公園DRIVE IN CHIBA STARLIGHT CINEMAZになるとのことだ。

ちなみに「仲ノ町駅西側に岩崎レール商会のダルマ(錘付)転轍機がある。」なる怪情報を提供してくれた飲み仲間が居る鉄道バーは、東京都中央区日本橋蠣殻町の「キハ」という店なのも申しそえておく。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。