東海道新幹線 浜松-豊橋 間の車窓から見える岩山の正体は?

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[場所]JR東海道新幹線 浜松-豊橋

JR東海道新幹線の下り列車に乗っている場合なら浜松駅を過ぎて25kmほどと30kmほどの地点の車窓右側に、岩肌がむき出しになった小山が2つ続けて見えるのをご存知の方は多いだろう。車窓からの眺めでは共に断崖にも見え、特に二番目(豊橋寄り)の岩山がどんな場所なのか?筆者は以前から気になっていたため、このたび思い立って訪ねてみた。

東海道新幹線 浜松-豊橋 間の車窓山側の東京方からきて浜松を過ぎて一番目(浜松寄り)に見えてくる岩山で、左下に見える線路は東海道本線 新所原-二川 間。この写真のみ一昨年の夏に撮影。タイトル写真は同区間二番目に見えてくる岩山。
■[場所]JR東海道本線 二川-豊橋
二番目の岩山は、JR東海道本線だと下り列車に乗車している場合なら二川駅を過ぎて1.3kmほどの地点の車窓右手に位置している。この山 は「岩屋山」と呼ばれ、二川駅から見てココとは方角反対側の東方約900mの場所にある大岩寺の境外仏堂の寺域になっていて、山的には中腹の、断崖部分としては麓になる位置に「岩屋観音堂」が建てられており、千手観世音菩薩を本尊として信仰されている。

二川駅コンコース跨線橋からの西方の眺めで、右端に見えている岩山が「岩屋山」。手前から延びる軌間1,067mmゲージの線路がJR東海道本線で、この辺りはJR東海道新幹線が並行して走っているため、「岩屋山」は新幹線からも良く見える。車輛はN700系。
その 岩屋観音堂 の右には岩窟があり、それの先には岩山へ上れる急峻な岩場の細道の登り口がある。

県道3号から 東海道岩屋山古道 に入り約700mほど坂道を上った突き当たりに辿り着くと、目前にご覧のような霊場らしい光景が広がる。「岩屋観音堂」はこの場所の左側に建っている。
上写真の画面外の左先にある岩窟。その昔はここに「千手観世音像」が安置されていたと伝えられている。そしてこの岩窟からさらに画面外の左奥、岩屋観音堂を過ぎた先の右側に 岩屋山 の山頂へ至る細道の登り口がある。
岩屋山 の標高は78.2mで、山頂には聖観音像が立っている。
この観音像は銅製で身長は約2.9m。実は二代目で1950年に再建され祀られた。
なお、山頂の聖観音像と大岩寺本尊の千手観世音菩薩座像は別の存在であることを申し添えておく。
その辺の経緯は、下々写真の説明板の文を読んでいただけたらとお願いしたい。

岩屋山の頂上に立つ聖観音像。右の石柱は「駐蹕之趾」の碑。ここへ登るまでの道は、さながらプチ岩稜登山をしている気分が味わえる。
岩屋観音堂脇の崖の前に立つ説明板。千手観世音像と聖観音像の由来が記されている。ちなみに聖観音像が二代目なのは、初代が太平洋戦争で1944年(昭和19年)に供出されたためになる。
さて、この岩屋山がJR東海道新幹線やJR東海道本線の車窓から見えるならば、山頂からはそれらの電車が眺められるはずではないだろうか?と思うわけで、登ってみると案の定、眼下をそれらの電車たちが行き交う光景を目にすることができた。
ということで、そんな山頂からの眺望もお見せしておこう。

岩屋山山頂からの南東方の眺め。JR東海道新幹線を走っているのはN700系。
岩屋山山頂からの南西方の眺め。中央に渥美半島の山々が遠望できる。JR東海道新幹線を走っているのはN700系。
この辺りは新幹線と在来線が並行しているため、JR東海道本線の列車も眺められる。車輛は311系8連。
記事がここで完結してしまったらただの名所旧跡めぐりになってしまう。なので、鉄道が主役の旅を応援する当サイトならではのお勧めしておきたいスポットが 岩屋山 の近隣にあるので、そこを紹介しておこう。
それは「豊橋市地下資源館」という施設で、鉱山関係の常設展示があるのだが、その展示品の中に三重県の紀州鉱山で使用されていた鉱山軌道の車輛があり、昔日を偲ぶことができる。
場所は二川駅と 岩屋山 との中間辺り、二川駅の西北西800mほどのところになる。

豊橋市地下資源館は、国際児童年記念事業の一環として1980年に視聴覚教育センターへ併設する形で開館した施設。入場に関しては無料(プラネタリウムなどは有料)。開館時間9:00~16:30。休館日 月曜日(祝休日の場合は翌平日)および年末年始。
館内に保存展示されている紀州鉱山のバテロコ(蓄電池機関車)と客車。軌間は610mmゲージ。
車輛前に立てられた説明板。なお、紀州鉱山は廃鉱になったが、鉱山軌道の一部は湯ノ口温泉と宿とを結ぶトロッコ電車として残り、活用されている。
バテロコを右斜め前から眺めたところ。裏にはいずれ展示されるのであろう鉱山用品が並んでいる。
バテロコの車体はニチユ製2t機で、バッテリーはGS製。
客車はドアは開いているが、展示物保護のため乗ることはできない。
客車の後ろ側。赤いシールはテールなことを示しているのだろうか?
砕かれた鉱石を先頭のバケットで集め、後方の鉱車(トロッコ)に積み込む機械の マインカローダー も展示。鉱車を2両従えている。
展示ケースに鉱車の足回りを使用しているのが面白い。
坑内自転車も置かれている。
「鉱石が掘り出されるまで」という展示。左下と中央にバテロコ牽引の鉱石列車の模型がいる。
実は当記事の写真は一昨年の初冬に撮影してあった(2枚目の写真を除く)のだが、アップ予定だった春頃にCOVID19の影響で「豊橋市地下資源館」が臨時休館になってしまったため掲載を先伸ばしにしているうちに、年を越してしまった(汗)。
COVID19の状況によってはまた臨時休館になることもありえるので、地下資源館のURLを載せておこう。
https://www.toyohaku.gr.jp/chika/
豊橋プラネタリウム・地下資源館
〒441-3147 愛知県豊橋市大岩町字火打坂19-16
TEL 0532-41-3330
開館時間 9時~16時30分
休館日 月曜日(祝祭日の場合は翌平日)、年末~1月3日

もう一つ浜松寄りの岩山

■[場所]東海道本線 新所原-二川
付近は弓張山地の南端ということもあり、他にも似た姿の山があるのだが、あくまで電車の車窓から見える岩山という意味で、JR東海道本線 新所原-二川 間の沿線にもゴツゴツの岩肌をさらした小山があり、下り列車に乗車している場合なら車窓右手に眺められる。

JR東海道本線 新所原-二川 間の車窓から眺めた立岩。右の建物の右横にある神社の裏に登山口がある。
立岩は新所原駅からも見える。車輛は天竜浜名湖鉄道TH2100形。
これは「立岩」という山で、標高は約83m(諸説あり)、場所は新所原駅の西北西1.3kmほどのところにある。
JR東海道新幹線の線路からは少し離れてはいるが、やはり下り列車に乗っている場合なら車窓右手に望むことができる。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。