令和に残る奇跡の情景…ローカル私鉄タイプ直接吊架式電車線

鉄道が主役の旅スタイルを応援する見どころ案内

[場所]銚子電鉄 海鹿島-君ヶ浜

千葉県の銚子電鉄は、太平洋側の犬吠埼を巡る総延長6.4kmの地方私鉄なことは皆さんご存知と思う。また最近では「電車を止めるな!」なる映画を制作したりと、鉄道以外でも名を馳せている。
ところで、ココはケイオー出身の電車が幅をきかせる以前のほんの4年前までは、単コロもコトコトと走る情緒あふれる、いかにもローカル鉄道という情景が展開されていた。自分もその雰囲気が好きだったので、それなりの回数を訪れている。
さて、この鉄道の電車線だが、なんとイマとなっては珍しい直接吊架式電車線が現時点でも採用された鉄道路線になっている。なので、外出自粛のご時世ということもあり、2年くらい前の写真にて、記事を組んでみた。

タイトル写真の画面外さらに左(下々写真左)にある踏切からの銚子方(北東向き)の眺めで、電車は後追い撮影。直接吊架式電車線が張られた片持ち架線柱が並んでいる光景は味わいがある。
直接吊架式電車線なら、東京だけに限って見ても、東急世田谷線や都電荒川線(さくらトラム)の一部にあるし、全国を見回したら採用している路線はまだまだある、と言われそうだが、それらは軌道法による軌道で、鉄道事業法による普通鉄道ではないので、別扱いにさせていただきたい。
では、そんな銚子電鉄のローカルタイプ直接吊架式電車線と架線柱の様々なタイプを撮影名所区間の 海鹿島-君ヶ浜 で眺めていこう。なお、この「撮影名所区間」については筆者の個人の感想であることを申し添えておく。

上写真の一番手前の架線柱の全体像。架線をビームにワイヤを介して張って、支持点に弾力性を持たせた構造。
キャベツ畑の中を駆ける2000形デハ2001+クハ2501の2連。撮影日は2018年3月31日で、同編成は現在別のカラーリングになっている。このデハ2001がグリーン車色だった頃は京王ファンが案外多く訪ねてきていたと聞いている。なお、日中はこの編成のみの1運行だったため、以後走行シーンの車輛説明は省略させてただく。では次に、左の踏切付近の架線柱から順に眺めていこう。
上写真踏切横の架線柱。支持点などは上々写真の片持ち式と同じタイプ。
画面左の半分写っている片持ち式架線柱が上写真ので、その次(右)は門型架線柱になっている。
上写真の門型架線柱には架線とは別に手前並行にワイヤが張られているが、これはカーブ区間になるので、架線柱間に曲線引金具を取り付けるためのモノ。ちなみに、右のワイヤ⇔吊架線をつないでいるのがその曲線引金具。
上写真の門型架線柱を横から眺めるとこんな形。支持点は片持ち式と同じタイプ。
左が上と同じ門型架線柱で、右はさらに外川寄り(南西側)の片持ち架線柱。その間のワイヤ⇔吊架線間に曲線引金具が取り付けられているのも見える。
上写真右の踏切西側前からの東向きの眺め。片持ち架線柱の立ち位置がここから対面(逆)側になっている。
上写真中央の片持ち架線柱のアップ。この架線柱にはワイヤも張られていて、左には曲線引金具も見える。
上々写真の同地点からの反対向き(外川方)の眺め。ワイヤ⇔吊架線間に曲線引金具が取り付けられているのも見える。直接吊架式電車線とシングルアームパンタグラフとの組み合わせも楽しい。
上写真右の片持ち架線柱を線路対面(南東側)からに北西向きに眺めたところ。この架線柱にもワイヤも張られていて、右にはやはり曲線引金具も見える。
かつては全国各地の私鉄で見られた地方ローカル私鉄タイプの直接吊架式電車線だが、おそらく現在の日本では銚子電鉄と熊本電鉄の一部だけ(軌道を除く)ではないだろうか? 稀少となった地方ローカル私鉄の電化方式が首都圏で見られるというのもスゴイと思う。
ちなみに、JR弥彦線弥彦駅の直接吊架方式電車線を2019年7月10日アップで紹介しているので、合わせて見ていただけるとありがたい。

画面内の第4種踏切の写真も載せておこう

架線ばっかり見上げていても頸が痛くなる(←画面なのでそんなことはない・笑)ので、上の写真内に度々登場している、模型にしたくなる第4種踏切も眺めておこう。

まるでNゲージレイアウトのジオラマに出てきそうな第4種踏切を西側の丘から、やや俯瞰で眺めてみる。
そのアップ。土の色がいかにも関東っぽい。
反対側から眺めると、それなりに普通の踏切…かな。
それにしても、「模型にしたくなる」と書いてしまっているが、筆者はNゲージでこの踏切をモチーフにしたジオラマを実際に作ってしまったのはココだけの話(汗)。
そして、それらを加味して思ったこと。木製の片持ち架線柱に直接吊架式電車線の単線線路といった情景には、やっぱりシルヘッダー付の吊掛け電車の単コロ運転が似合うよなーってこと(←個人の感想です)。
でも、銚子電鉄の吊掛け電車は、もう10年も前に廃車になってるから有り得ないよね。

上のようなことを考えていたら、あれっ外川駅にビジョン通りの電車800形デハ801が保存されている。いまの世の中で吊掛け電車が現役で復活したトカなら、それが訪問目的の一つになりそうだけどな。
確かに10年くらい前の感覚だったら吊り掛け電車はオンボロ以外の何者でもなかった。だが、10年の時を超えた現代においては、走ればヴィンテージ的貴重品として銚子名物になる要素があるだろうし、観光のウリにもなり得よう。復活とかクラウドファンディングでどうにか…は、もう映画「電車を止めるな!」(2020年夏公開予定らしい)で募ってるから…ならないよね。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。