名鉄とJR東海の電車が同じ線路を走る区間

鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所] JR東海道本線・名古屋鉄道名古屋本線 豊橋-平井信号場
JR・名鉄 豊橋駅の在来線プラットホームは主に、1・2番線がJR飯田線の電車が使用し、3番線は名鉄名古屋本線の電車が使用して、さらにその海側の4番線~はJR東海道本線の列車が使用しているという、名鉄線がJR線に挟まれた配置になっていて、さらに名古屋方の山側にはJR東海の豊橋運輸区などの施設もあり、名鉄名古屋本線が豊橋駅構内のドコをどう通っているのか気になっている方も多いのではないだろうか。

豊橋駅の橋上駅舎から2・3番線プラットホームへ階段で降りると、右にJR東海、左に名鉄、さらにその左にJR東海の電車が停まっている光景が見られる。車輛は名鉄が3700系、JRが313系。
2・3番線プラットホームの名古屋寄り端からの南南東(東京)方の眺め。左がJR飯田線、中央が名鉄名古屋本線、右がJR東海道本線で、名鉄のプラットホームがJRに挟まれていることが解る。電車は名鉄が3100系で、左と右のJR東海は313系。

実は、豊橋駅とここから北西に名鉄側キロ程で3.8km(JRは3.9km)地点に位置する平井信号場との間は、JR東海と名鉄のそれぞれの会社が所有している飯田線と名古屋本線の単線を共用し、複線として使用している。それもあって、豊橋駅では名鉄線がJR線とJR線の間にプラットホームを巧く配置できるような配線になっているのだ。
なお、豊橋-平井信号場 間の各線路の所有社は、山側の上り線を名鉄が、海側の下り線をJR東海が、それぞれ保有している。

豊橋駅2・3番線プラットホームの名古屋寄り端から北北西(名古屋)方を眺めたところで、名鉄保有の上り線の線路上を走りくるJR東海の313系。
上写真と同地点からの眺めで、JR東海保有の下り線の線路上を走りゆく名鉄2200系+2300系。

ではナゼこのようなJR東海と名鉄の線路共用区間が成立したのか。簡単に要点だけ記すと、この区間の開通はまず1897年(明治30年)7月15日に豊川鉄道により飯田線の前身になる豊橋-豊川 間が単線で開業。1927年(昭和2年)6月1日に途中に平井信号場を設け、愛知電気鉄道がそこから吉田(現・豊橋)駅まで山側に単線を敷設してこちらを上り線、元の豊川鉄道線を下り線として複線共用開始。1935年(昭和10年)8月1日に愛知電気鉄道は名岐鉄道と合併して名古屋鉄道成立。1943年(昭和18年)8月1日に豊川鉄道が国有化され飯田線になり、1987年4月1日の国鉄分割民営化により飯田線がJR東海の路線になって、現在の形態に至っている。

船町駅の豊橋寄りにある通路からの南南東(豊橋)方の眺めで、左線が名鉄保有の上り線で右隣線はJR東海保有の下り線。そのJR東海保有の線路上を走りくる名鉄1200系+1000系パノラマsuper。
上写真と同地点からの眺めで、右のJR東海保有の下り線の線路上を走りくるJR東海の313系。
船町駅の上写真の同地点の反対向き、北北西(名古屋)方の眺めで、名鉄保有の上り線の線路上を走りくる名鉄3700系。ちなみに名鉄の列車は全て船町駅を通過する。
上写真と同地点からの眺めで、名鉄保有の上り線の線路上を走りくるJR東海213系。ちなみに日中の豊川以遠からの列車なので船町駅は通過。

ところで、豊橋-平井信号場 間には 船町、下地 の2駅があるが、名鉄の電車はその2駅には停まらないのは皆さんなら解っているだろう。ナゼかはこの2駅がJRの駅だからに他ならないが、豊橋駅から乗車する時には気をつけたい。まあ当サイトの読者で誤乗する人はいないと思うが。
では、そんな2駅を通る電車を眺めていこう。

船町駅プラットホームの名古屋寄り端から北北西(名古屋)方を眺めたところで、名鉄保有の上り線の線路上を走りくる名鉄1700系+2300系。
上写真と同地点からの眺めで、名鉄保有の上り線の線路上を走りくるJR東海の313系。
下地駅プラットホームの豊橋寄り端からの南南東(豊橋)方の眺めで、JR東海保有の下り線の線路上を走りくるJR東海の313系。ちなみに日中の豊川以遠へ行く列車は下地駅は通過。
上写真と同地点からの眺めで、JR東海保有の下り線の線路上を走りくる名鉄2300系+2200系。
下地駅プラットホームの名古屋寄り端から北北西(名古屋)方を眺めたところで、名鉄保有の上り線の線路上を走りくるJR東海の313系。
上写真と同地点からの眺めで、名鉄保有の上り線の線路上を走りくる名鉄2200系+2300系。

さて、ここまで見てくると平井信号場の合流分岐点も眺めてみたくなるというもの。位置的には、JR飯田線小坂井駅から、上り線が南に600mほど、下り線が南南西に500mほどの地点にあり、グーグルマップを見てもらえば解ると思うが、下り線の分岐点はその小坂井駅から徒歩で行きやすい場所にある。
上り線の合流点は近づくことはできないが、豊川放水路の土手上から遠望することができるので、せっかくなら、そこも訪れてみるのも良いかも知れない。
というわけで、そんな2地点も見てみよう。

平井信号場上り線側の合流地点を豊川放水路の土手上から北北西(名古屋)方向に遠望。画面左から中心に向かって延びている線路が名鉄名古屋本線で、右からJR飯田線が合流してくる。電車はJR東海の313系。
合流して名鉄保有の線路に入ったJR東海の313系。
上と同地点からの遠望で、名鉄側は直線で合流する。電車は名鉄1200系+1000系パノラマsuper。
平井信号場下り線側の分岐地点を名鉄線の一つ名古屋寄りの踏切付近から南南東(豊橋)方向に眺めたところ。左がJR飯田線で右が名鉄名古屋本線。電車は名鉄1000系+1200系パノラマsuperで右に進む。
上写真と同地点からの眺めで、電車はJR313系で左に進む。
上写真に写っている踏切付近からの北(名古屋・豊川)向きに名鉄名古屋本線の上り線のオーバークロスを眺めたところ。電車は名鉄1200系+1000系パノラマsuper。

余談になるが、JR飯田線沿線には日本車輌製造の豊川製作所があることは、皆さんご存知と思うが、ここで製造された鉄道車輛の多くは甲種輸送によって、この線路を通って全国へ運ばれて行く。
よく見られる出場とは逆の、珍しい入場時の写真になるが、それをお見せして、この記事を締めくくることにしよう。

日本車輌豊川製作所を目指してJR東海保有の下り線の線路上を走りゆく甲種輸送列車(右)を豊橋駅4番線プラットホーム名古屋寄り端から遠望。車輛は小田急30000形EXEで、牽引機はDE10。左は311系。2017年3月14日撮影。動画よりの切り出しで、ムービーはユーチューブにて公開中。https://youtu.be/iIwTbuV-Xxk

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[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。