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「路肩軌道」とは、道路の路側帯に寄り添うように敷設された線路を指す隠語
高知県の とさでん には路肩軌道が多く存在するので、シリーズ化して分けてご紹介…この回では終着停車場の伊野停留場を眺めていく
[場所]とさでん交通伊野線 伊野停留場
路面電車の併用軌道は、道路の真ん中を通っているイメージがあるが、高知県とさでん交通の軌道線には道路の路肩or路側帯寄りの片側外側へ並走するスタイルにて、その道路と寄り添うように線路が敷設されている場所が多々ある。特に伊野線の場合は、鏡川橋より西側には、単線併用路肩軌道にて沿線の家や店舗の軒先を小型電車が走る、まるで明治末期~大正~昭和初期の軌道風景が再現されたような回顧的シーナリー(筆者の感想です)が令和の世にも所々に現存している。
手前の電停は伊野駅前停留場で、奥が伊野停留場。電車は600形630。当初はその単線路肩軌道が敷設されている 鏡川橋西方~伊野停留場 間を一気に紹介しようと思ったのだけれども、写真点数が多かったので3回シリーズ(サイト的な特ダネや、イベント告知があった場合にはその速報を優先するため不定期シリーズになることがある…)として、区間ごとに分けて掲載することにした。そして第1弾として、この度は終着電停の伊野停留場とその界隈を眺めていく。
なお、掲載写真は新型コロナ禍直前の撮影のため、現在は現状と異なる店舗やもぉ存在していない看板が写っている点にはご理解ください。
伊野電停は路肩にある終着停留場
とさでん交通伊野線は、駅前線はりまや橋電停を起点に、西方向へ伊野停留場まで延びる路線距離11.2kmの軌道路線で、路面電車タイプの車輌にて運行されている。
その伊野線の終着停留場である伊野停留場は、JR土讃線 伊野駅の北西200mほどの地点に立地している。なお、とさでん交通伊野線には、この伊野停留場とは別に、JR土讃線 伊野駅の北約100m弱&伊野線 伊野停留場の東約100m強の位置に、伊野駅前停留場がJR伊野駅最寄りの電停として設置されていることを記しておく。
では、終着停留場の伊野停留場と界隈を、各方角から項を分けて、眺めいてこう。
■伊野停留場の東側からの眺め…
まずは、伊野停留場(以後「伊野電停」に略)を、東側の伊野駅前停留場方から眺めてみよう。
伊野電停を東側から眺めた全景。電車は600形617。
左の線路脇に降車用安全地帯があるが、電車の着発はもっぱら右のプラットホームがある側の線路のみ。線路に直接下車するにしても、後続電車がスグにくるわけではないので「ご安全…」。
東方の本線分岐器部分からの車止め方の眺め。
その東方の本線分岐器のアップ。
安全地帯あたりの線路間からの東側(はりまや橋方)の眺め。彼方に伊野駅前停留場が見える。上写真から、伊野電停と伊野駅前停留場との位置関係も解っていただいたコトと思う。
■伊野電停には駅舎がある
伊野電停は軌道路線の停留場でありながら、木造の粋なスタイルの駅舎が建っている。ココでは、この駅舎を線路側から、外観をグルッと見ていこう。
安全地帯から北西向きに眺めた伊野電停の駅舎と界隈の建物を含めた情景。
伊野電停の駅舎の南東側からのアップ。
伊野電停の駅舎の、線路を渡った対面からのアップ。
伊野電停を南西側から眺めた駅舎と界隈風景。とりあえずお茶の看板の先にある謎の線路跡の存在を覚えておいてほしい。この駅舎は、一見すると年代モノの謂れがある建物をリニューアルした箱にも覗えるが、実は2008年11月20日竣工の新築で、平成時代の建物になる。
■車止め周りを眺める…
終着駅の象徴といえは車止めだが、軌道線である伊野線の線路終端部にも車止めがある。それでは、この車止めと界隈を眺めていこう。
プラットホームから西向きに眺めた車止めと界隈。
車止めと界隈を南東側から眺めたトコロ。
車止めと界隈を、線路を渡った対面から眺めたトコロ。車止めの先、左スグに神社の参道がある。新型コロナ禍直前の撮影のため、一部の店舗は現在とは状況が変わっている点を、ご理解いただきたくお願いする。
車止めと界隈を南西側から眺めたトコロ。ある意味でいう線路終端の引き上げ線部分にも安全地帯が設けられている。
架線終端部に立つ架線柱を、奥側から東向き(はりまや橋方)に眺めたトコロ。左は上々写真の参道に鎮座する狛犬のうちの一体。
車止めの奥側からのアップ。レールを組んだモノで、それをエメラルドグリーンにペイントしてある。
西方に設置されている分岐器部分からの伊野停留場のプラットホーム側(東向き)の眺め。
その西方に設置の分岐器のアップ。ちなみに、折り返し電停にして、北側には立派な駅舎が建っているとはいえ、降車は進行方向左(南)側の軌道敷へと下車することになっている。路面電車としての運輸上は当たり前であるが…。
■電停東方から北東側へ分岐する謎の線路の正体は!?
伊野電停の東側(はりまや橋方)直近に、北東方向へ延びる謎の廃線路跡がある。本線との分岐器はすでに撤去されているので現役線路でないことは解るのだが、気になって、その先を確認するべく廃線路を奥へと辿ってみた。
写真9枚上のキャプションにて、お茶の看板の先に謎の線路跡があるコトを窺わせたが、コレがその分岐部分と界隈の情景。
分岐部分を東方から眺めたアップ。本線と線路跡はつながっていない。なので、この線路跡は廃線ということになる。
廃線路の北東方から本線側を眺めた光景。
上写真の花壇の辺りからの廃線路の北東向き終端側の眺め。
さらに北東方へ進んだ地点から北東向きに眺めた廃線路の終端側。この地点までには架線は張られていないのだが…。
廃線路終端部。車止めは伊野線本線のレールを組んだのと同じタイプだが、コチラのは未塗装。そしてナゼか、この周りには架線が張られていて、電化されていたことが窺われる。ということはこの廃線路はかつて電留線だったモノと考えられる。この廃線路は、分岐点より先150mほどの所で行き止まりになり、その先には線路が延びていた形跡がないため、例えばだが、似た配線の急曲線にて北方へ分岐する電留線を設置している豊橋鉄道市内線 競輪場停留場(ソチラはさらに分岐して後に2線あるが…)よろしく、こちら伊野電停の廃線路はかつて電留線として使用していた線路の跡と考えたのだが…帰宅後に調べたトコロ、やはりそぉであった。
次回は、伊野駅前停留場界隈~北内停留場界隈を探訪する
次回の「その2」では、伊野線 伊野駅前停留場~東へ約1kmに位置する北内停留場 間の軌道スタイルを眺めながらの界隈の探訪と、その間の停留場巡りをする予定。
伊野電停から東へ100m強の地点から東向き(はりまや橋方)に眺めた伊野駅前停留場と界隈の景色。電車は600形630。「とさでんの単線路肩軌道を訪ねる…その2」の記事は、本サイト的な特ダネや、速報性が心情のイベント情報が緊急で入らない限り、10月アタマにはアップ予定なので乞ご期待。
ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。
[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。