板橋区城北交通公園(東京都)に保存されているコッペルと仲間たち

鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所]都営地下鉄三田線 蓮根駅 東方約200m

都営地下鉄三田線 蓮根駅の東方200m程の位置にある「板橋区 城北交通公園」には、かつて東武東上線 川越機関区に居た“コッペル”SLや“D51 513”蒸気機関車が保存展示されているので、それを紹介していこう。

実は、この記事は上記の車輛と一緒に同公園に保存展示されている元・都バスの 日野K-RE101 1982年式“マスコットバス さくら号”を、姉妹サイト『BusFan.jp』の中のシリーズ記事用として撮影した際に、同時に撮った写真での紹介になる。こんな経緯もあり、そちらも合わせて見ていただけると有り難い。
なお、上のタイトル写真の右に写っているのが“さくら号”で、これにより“コッペル”との展示位置の関係が判るかと思う。
それでは、まず“コッペル”から眺めていくことにしよう。

和歌山県からきた コッペル

ベビーロコ号の背後にはレンガ調の建物が建つ。機関車がドイツのコッペル製ということもあるからか、見る向きによってはヨーロッパの駅にいるような感覚にもなる。
ベビーロコ号の背後にはレンガ調の建物が建つ。機関車がドイツのコッペル製ということもあるからか、見る向きによってはヨーロッパの駅にいるような感覚にもなる。
正面から眺めると、小さな車体に取り付けられた自動連結器が、異様に大きく感じる。
正面から眺めると、小さな車体に取り付けられた自動連結器が、異様に大きく感じる。
右側にはプラットホームがあり、足回りを真横から見ることはできない。
右側にはプラットホームがあり、足回りを真横から見ることはできない。
キャブに東武鉄道の社章のエンブレムと、「1」のナンバープレートが取り付けられているのが判る。
キャブに東武鉄道の社章のエンブレムと、「1」のナンバープレートが取り付けられているのが判る。
ベビーロコ号の左側はツツジが植えられていて、足回りを間近で見ることはできない。
ベビーロコ号の左側はツツジが植えられていて、足回りを間近で見ることはできない。

公園の正門を入って、すぐ目の前に鎮座しているのがこの公園での愛称『ベビーロコ号』こと“東武鉄道1号”機関車。
この ベビーロコ号 はドイツのアーサーコッペル社で製造された機関車ということで、見出しにはあえて「コッペル」と謳わせていただいた。
さて、この保存展示車には上々に掲載してあるサイド右の写真を見ても判る通り、その中央付近に説明板が取り付けられており、この文中に ここへくるまでの経歴 が書いてあるので、一部抜粋して以下に記そう。
「ベビーロコ号は、1912年(明治45年)にドイツのアーサーコッペル社で製造され、有田鉄道(和歌山県)で使用され、紀州の山野で活躍した。戦後、東武鉄道がガソリン機関車と交換取得したが、性能は牽引力10車両程度のうえ、燃料・水の積載量も少なく、制動機は手動のため、東上線を回送で走っただけで川越機関区に移され、放置されていた。その後、1958年(昭和33年)7月以降、常盤台駅前に展示されていたものである。」
とのことで、この城北交通公園に設置されたのは1973年(昭和48年)8月だそうだ。

ベビーロコ号と客車の連結部分。端梁の右に、寄贈者名のプレートが貼られている。
ベビーロコ号と客車の連結部分。端梁の右に、寄贈者名のプレートが貼られている。
上写真のプレートのアップ。「東武鉄道寄贈 製造所独乙アーサーコッペル汽車会社 復元 鉄道用品株式会社」と読み取れる。
上写真のプレートのアップ。「東武鉄道寄贈 製造所独乙アーサーコッペル汽車会社 復元 鉄道用品株式会社」と読み取れる。

ベビーロコ号には、すでに銘板は見当たらなかったが、過去の資料によると「1912-9/製番5885。納入有田鉄道、1946年キハ12と交換で東武鉄道へ譲渡」とある。ちなみに、東武鉄道にはこの ベビーロコ号 以外にも1号機関車が何両か存在していたそうだ。
また、この ベビーロコ号 の次位には謎の客車も連結されているが、その場所を野球少年団がずっと使用していたので、写真は撮っていない。

その他の鉄道系 保存展示物

城北交通公園には ベビーロコ の他に、鉄道系の屋外展示物としては『D51 513』蒸気機関車と、都電8000形の輪軸が保存されている。
まず、この公園での愛称『デコイチ』。この車輛は、山形県から1973年(昭和48年)3月にやってきた国鉄の蒸気機関車で、詳細は説明板に書かれているので写真を見ていただけたらと思う。

D51 513 が展示されている場所は、タイトル写真でいうところの右のバスの、さらに右になる。
D51 513 が展示されている場所は、タイトル写真でいうところの右のバスの、さらに右になる。
D51 の説明板。埼玉県の大宮工場で製造され、日本海側で活躍し、山形県からきたことが記されている。
D51 の説明板。埼玉県の大宮工場で製造され、日本海側で活躍し、山形県からきたことが記されている。

なおこの D51 513 の周りにはこの説明板の他に「蒸気機関車のしくみ」を解説したプレートも立てられていたり、また踏切や警報機・遮断機、そして腕木式信号機なども設置されていたりと、見どころは デコイチ 以外にもある。
続いて、もうひとつの屋外展示物である、都電8000形の輪軸。

交通資料館の前に展示されている都電8000形の輪軸。
交通資料館の前に展示されている都電8000形の輪軸。
上写真でいうところの、右の車輪の刻印。住友金属工業製なのが解る。
上写真でいうところの、右の車輪の刻印。住友金属工業製なのが解る。

この輪軸の見どころはインサイドフレーム台車用のため軸受座が外側に飛び出していないのが特徴だろうか。さらに、動力台車の動軸のため歯車がついているのも注目点。ちなみに、都電8000形はツリカケ駆動方式だったということを申し添えておく。
また、公園内には『交通資料館』という建物があり、館内には鉄道の歴史や蒸気機関車の構造を綴ったパネルや、鉄道用品、模型が展示されていたり、HOゲージのジオラマレイアウトがあったりと、こちらも楽しめる場所になっている。

交通資料館の屋内中央にはHOゲージのジオラマレイアウトが展示されている。運行時間は、開園日の10時30分から、13時30分から、15時からで、希望者がいる場合のみ走行する。
交通資料館の屋内中央にはHOゲージのジオラマレイアウトが展示されている。運行時間は、開園日の10時30分から、13時30分から、15時からで、希望者がいる場合のみ走行する。

この公園には、隣接して野球のグラウンドがあるため、筆者が訪ねた日も野球少年たちが多勢で、この公園の施設内で出番を待っていた。使用の仕方を眺めていると、彼らスポーツマンの目には展示車輛は休憩所程度にしか映っていないように見受けられたが、このような展示車輛に何気なく接しているうちに鉄道などに興味を持ち、いずれその少年たちの中から交通業界へ就職する者が現れることを願いたい。

城北交通公園

開園時間
9時~16時
休園日
月曜日(祝日の場合は直後の平日に振替)、年末年始
場所
〒174-0043 東京都板橋区坂下2-19-1(区立城北公園内)
TEL
03-3969-9422
URL
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/000/000134.html

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。

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