柵になったレールの浮出文字と不思議な向きの遮断機と…

鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所]福井鉄道福武線 越前武生-北府
福井鉄道 越前武生駅は、JR北陸本線 武生駅の本屋口(西口)とは250m程離れている。JR武生駅の駅前広場の前を横切る道を右の北方向に進むと、右側に建つアルプラザのビルを過ぎた辺りにタクシーが停まる駅前広場があり、その先に位置している、そんな距離感になる。

越前武生駅の駅舎は3階建ての四角い建物で、この入口をくぐると改札があり、その向こうにホーム2面に3線の頭端式の発着線があるといった地方私鉄の始発駅らしいスタイルで、さらに駅構内には電留線も備え、また駅舎西側の道路沿いには路線バスの停留所もあってと、北陸本線の線路が東脇に寄り添っているとはいえ、JR駅から少し離れている要素もあってか、地方都市の独立したターミナル駅といった雰囲気をかもし出している。ちなみに、この駅は2010年3月24日までは「武生新」を名乗っていた。

越前武生駅の駅舎。画面右に通っているのはJR北陸本線で、福井鉄道福武線の線路は建物に入った先にある。

またかつては東脇を通る北陸本線の線路を挟んだ対面の東側に福井鉄道「南越線 福武口」駅があり地下道で結ばれていた。しかし、この駅は1981年4月1日に南越線が廃止されたと同時に廃止されている。
さてここまで「越前武生」駅のことを記してきたが、実のところ、今回の主題は同駅の駅舎や駅の歴史ではなく、この駅舎の西脇にある路線バスの停留所からさらに先の北方向へ道路沿いに続いている古レールを利用した柵になる。

越前武生駅の北側を、田原町寄りに200m程行った地点から南向きに眺めたところ。線路と道路の境界に連なる柵の古レールが、まずの主題になる。

古レールを利用した柵はそれなりに各地で見ることができるが、ここの注目点は、支柱に使っている古レールに打たれた浮出文字(ロールマーク)の高さを丁度良い位置に持ってきているものがやたらと多く見受けられる点にある。気のせいかも知れないが、歩行者がそれを見て楽しめるようにとの、製作者の「あそび心」を感じてならない。
そんなわけで、その古レールの画像の一部を下に羅列しておこう。写真の天地方向は無視して、文字の向き優先で掲載してある点はご理解いただきたい。








そして福武線の線路は、この柵が途切れる越前武生駅200m地点あたりから、S字カーブで北府駅へ向かうわけだが、そのSカーブが始まるあたりの最初の踏切の南側の遮断機が、ナゼか左側のみに2個設置されているという不思議な配置になっている。まずは写真を見ていただきたい。

遮断機が開いているところ。線路手前は遮断機が左側2個のみと不思議な配置になっている。この場合、一般的には道路の左右両側に遮断機を立てると思うが、右側に遮断機はない。線路の反対側の遮断機は右側一つでよくある配置。
遮断機が閉まっているところ。こおなると、歩行者はどこで待ったらよいのか悩んでしまう。なお、車輛は880形。

遮断機が閉まっている場合、左の道から左上へ延びる道へ行こうとすると、手前の遮断機を越えていかねばならず、ちょっとハラハラした気分になる。

北府駅も眺めてみよう

越前武生駅の次の駅は0.6km先にある「北府(きたご)」駅で、ここの駅舎は1924年(大正13年)2月23日に福武線が前身の福武電気鉄道として開業した時からの建物が今なお現役で使用されている。そんな由緒ある建物なので国の“登録有形文化財”に2013年7月19日に登録申請を行ない、その後に「沿線住民の生活を支える地方鉄道の駅舎 福井鉄道北府駅本屋」として登録されている。また駅舎内はギャラリースペースになっており、資料やかつて使用された鉄道用品が展示されているので、せっかくなら、さらに足を伸ばして訪れてみることをお勧めしたい。ちなみに、この駅は2010年3月24日までは「西武生」を名乗っていた。

北府駅本屋を北側田原町寄りから南向きに眺めたところ。左が本線でS字カーブで越前武生駅へと向かっており、右の車庫線は直線になっている。

北府駅本屋の南側からの眺め。国の登録有形文化財に登録された説明パネルがあったので、その解説文をここに掲載しておこう。「福井鉄道北府駅本屋は、武生市街地の北側に位置する鉄道駅舎です。桁行14m、梁間5.5mを基本とし、洋風小屋組みの外観となっています。切妻造り桟瓦葺き、木造平屋建ての建物で、東側はプラットホームとなっています。近年、老朽化に伴って改修工事を実施し、平成24年(2012年)3月15日に完了しました。室内は元の天井を残しながら、一部をギャラリーとして改装し、鉄道資料を展示しています。待合室脇の旧売店の出窓をショーウインドー風につくるなど特徴的な外観をもっています。」※カッコ内は筆者による加筆。


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[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。