とりあえず日本唯一現役の二軸レールバス

鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所] 紀州鉄道 紀伊御坊駅
和歌山県にある紀州鉄道は、二軸レールバスが営業路線において日本で唯一現役で運行されている鉄道で、2016年3月の時点では休車のキテツ1形キテツ1と運行可能なキテツ1形キテツ2の2両が在籍している。

ところで、タイトルに「とりあえず」の文字が冠されている点が気になった方がいるのではないだろうか。
それは同鉄道が、2015年秋に信楽高原鐵道からボギー車のSKR300形301を無償で譲り受けて、この車輛が2016年1月31日よりKR301として運行を開始したことによって主力であったキテツ2が予備車となったからだ。

この2両の二軸レールバスはともに兵庫県の北条鉄道から譲り受けたもので、そのうち2000年7月10日から運用を開始したキテツ1は以前より休車状態だったが、2009年10月30日から運用を開始したキテツ2は元気に稼動していた。
先に記したようにKR301が運行を開始して、キテツ2は予備車になったとはいえ現役車輛としての位置付けは変わらない。これは、いつかは旅客を乗せて走る機会があるかも知れないということだ。
それでは二軸レールバスがどんな車輛なのかを眺めていくことにしよう。

キテツ1形キテツ2は、1985年富士重工業製の元・北条鉄道フラワ1985形フラワ1985-1で、2009年秋に紀州鉄道にやってきてキテツ2になった車輛。2016年2月以後は予備車となっている。
キテツ1形キテツ2は、1985年富士重工業製の元・北条鉄道フラワ1985形フラワ1985-1で、2009年秋に紀州鉄道にやってきてキテツ2になった車輛。2016年2月以後は予備車となっている。
キテツ2のサイドビュー。バスのパーツを多用しているのが見て取れる。
キテツ2のサイドビュー。バスのパーツを多用しているのが見て取れる。
キテツ2の西御坊方一軸台車。前部には総括制御ができるようにジャンパ栓を備える。
キテツ2の西御坊方一軸台車。前部には総括制御ができるようにジャンパ栓を備える。
キテツ2の御坊方一軸台車。北条鉄道時代そのままのスノウプラウが装備されている。
キテツ2の御坊方一軸台車。北条鉄道時代そのままのスノウプラウが装備されている。
キテツ1形キテツ1は、1985年富士重工業製の元・北条鉄道フラワ1985形フラワ1985-2で、2000年夏に紀州鉄道にやってきてキテツ1になった車輛。2016年3月時点では休車状態。
キテツ1形キテツ1は、1985年富士重工業製の元・北条鉄道フラワ1985形フラワ1985-2で、2000年夏に紀州鉄道にやってきてキテツ1になった車輛。2016年3月時点では休車状態。

そもそもこのキテツ1形へ連なる第2世代レールバスは、1982年に富士重工業が利用客の少ない線区向けとして、バスの構造を大幅に取り入れて開発したLE-Cerに端を発しており、それをベースにした車体長12m級のLE-CerIIが1984年から各地の鉄道で活躍するようになったが、結局その大きさの二軸車ではラッシュ時に輸送力不足となるため、1985年以降は車体長15m級のボギー台車の車体を持つレールバスへと移行していった。
そんな経緯もあり二軸レールバスは製造された数がかなり少ない上に、車体はバスに準じているため一般の鉄道車輛に比べて耐久性も劣ることから、すでに他社では全て廃車になり、現役の営業車として稼動状態にある二軸レールバスが見られるのは紀州鉄道のみとなってしまったのだ。

紀州鉄道線は、JR紀勢本線 御坊駅に接続する御坊駅から西御坊駅を結ぶ2.7kmの路線。まるで1/1模型のような線路配線も魅力のひとつ。
紀州鉄道線は、JR紀勢本線 御坊駅に接続する御坊駅から西御坊駅を結ぶ2.7kmの路線。まるで1/1模型のような線路配線も魅力のひとつ。


KR301運用開始以後は、キテツ2が予備車になったため、二軸レールバスに乗れるチャンスはかなり限られてくるので、運用に付いているのを目撃した方は、ぜひともどこかの掲示板に書いていただきたいものだ。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。