小松のKOMATSU930E

鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所]JR北陸本線 小松駅

JR北陸本線を金沢駅方から上り列車に乗車すると、小松駅手前で車窓左手に、黄色くて巨大なダンプトラックが展示保存されているのが目撃できる。これは“KOMATSU930E”という、海外の露天掘り鉱山などにおいて、採掘所で採れた岩石や土砂をクラッシャー(岩石を砕いて目的の鉱物を探し出す場所)まで運ぶ作業をしている車輛で、岩石などを約300トンも積載することができる能力を持っている。

高架線からの眺めではその大きさが実感できないのと、列車から「気になる存在」を見つけてしまうと、鉄道とは直接関係がない事物でも、車窓案内ということで確かめたくなるのが当サイトでもあるので、早速 小松駅で降りて、そのダンプトラックを見学してきた。

小松駅コンコースから眺めたKOMATSU930E。手前の発掘現場は八日市地方遺跡で、1930年(昭和5年)に発見された弥生時代中期の大規模集落遺跡。
小松駅コンコースから眺めたKOMATSU930E。手前の発掘現場は八日市地方遺跡で、1930年(昭和5年)に発見された弥生時代中期の大規模集落遺跡。

“KOMATSU930E”は小松駅東口前にある『こまつの杜』という芝生が広がるエリアの入口付近に鎮座していた。
この杜は、世界的な建機メーカーである株式会社小松製作所が創立90周年を記念して、2011年5月13日に同社発祥の地である場所にオープンした施設で、げんき里山 と わくわくコマツ館 で構成されている。そこにシンボルのように置かれている KOMATSU930E は、2000年にコマツアメリカのピオリア工場で製造され、アメリカで約4年、チリで約6年活躍した後、2010年にこの地へ展示のためにやってきた、日本には1台しかない車輛だ。
それでは、このKOMATSU930Eを眺めていくことにしよう。

KOMATSU930Eの右サイドビュー。ベッセル(荷台)は丸底タイプを装備。これにより、衝撃による変型に強くなっているとのとこ。背後に見える建物は『わくわくコマツ館』で、小松製作所 旧本社建屋を再現した外観だそうだ。
KOMATSU930Eの右サイドビュー。ベッセル(荷台)は丸底タイプを装備。これにより、衝撃による変型に強くなっているとのとこ。背後に見える建物は『わくわくコマツ館』で、小松製作所 旧本社建屋を再現した外観だそうだ。
右斜め後ろからの眺め。車名の末尾につく「E」は電気駆動を表わしている。
右斜め後ろからの眺め。車名の末尾につく「E」は電気駆動を表わしている。
真後ろから見たところ。電気モータ駆動なのが窺える。
真後ろから見たところ。電気モータ駆動なのが窺える。
左斜め後ろからの眺め。見学用の階段と見比べると、その大きさが想像できるだろう。
左斜め後ろからの眺め。見学用の階段と見比べると、その大きさが想像できるだろう。
右斜め前から見たところ。ベッセル(荷台)の前の運転席に冠っている部分が丸いのは特注品とのこと。これによりひさしの上に岩が残らず、走行中に落ちてこないようになっているそうだ。
右斜め前から見たところ。ベッセル(荷台)の前の運転席に冠っている部分が丸いのは特注品とのこと。これによりひさしの上に岩が残らず、走行中に落ちてこないようになっているそうだ。
正面からの眺め。運転席への乗降用の階段が前面に設けられており、上はデッキのようになっている。
正面からの眺め。運転席への乗降用の階段が前面に設けられており、上はデッキのようになっている。
ベッセル(荷台)の上昇は、2016年3月時点では水曜日と土曜日の11時~16時。
ベッセル(荷台)の上昇は、2016年3月時点では水曜日と土曜日の11時~16時。
火曜日~土曜日には運転席試乗会が開催されている。時間が決まっており、休館日もあるので、詳しくは下記URLにて。 http://www.komatsunomori.jp/event/calender.html
火曜日~土曜日には運転席試乗会が開催されている。時間が決まっており、休館日もあるので、詳しくは下記URLにて。
http://komatsunomori.jp/event/calendar.html
これが運転台だ。電動駆動とはいえ、ディーゼル発電機を動かして得た電気によりモータを回転させているため、様々なメータやスイッチ類が並んでいる。ちなみにこの展示車は有人走行タイプだが、チリや豪州では同型車が 無人ダンプトラック運行システム によって稼働している場所もある。
これが運転台だ。電動駆動とはいえ、ディーゼル発電機を動かして得た電気によりモータを回転させているため、様々なメータやスイッチ類が並んでいる。ちなみにこの展示車は有人走行タイプだが、チリや豪州では同型車が 無人ダンプトラック運行システム によって稼働している場所もある。
KOMATSU930Eの見学用階段の昇り口にある説明板。車名の由来は「“930”の数字は総重量930,000LBSを表し、“E”はエレクトリック(電動式)を表しています。LBS とは重さを表す単位の『pound(ポンド)』の省略記号です(1ポンド約453.6g)。天秤 という意味の古代ローマの重量単位『libra』に由来しています。現在では、品質改良のため重量が増えているのですが、語呂が良く、お客様に既に浸透しているという理由から、ずっと『930E』という名前のまま活躍し続けています。『730E』『830E』『960E』は兄弟車種です。」とのことだ。
KOMATSU930Eの見学用階段の昇り口にある説明板。車名の由来は「“930”の数字は総重量930,000LBSを表し、“E”はエレクトリック(電動式)を表しています。LBS とは重さを表す単位の『pound(ポンド)』の省略記号です(1ポンド約453.6g)。天秤 という意味の古代ローマの重量単位『libra』に由来しています。現在では、品質改良のため重量が増えているのですが、語呂が良く、お客様に既に浸透しているという理由から、ずっと『930E』という名前のまま活躍し続けています。『730E』『830E』『960E』は兄弟車種です。」とのことだ。
運転席試乗で貰えるパンフレット。諸元も掲載されている。
運転席試乗で貰えるパンフレット。諸元も掲載されている。

記者が訪れた時間帯だけの傾向かもしれないが、この時に「KOMATSU930E」の運転席まで上がって試乗した見学者は大人しかいなかった。
説明板やパンフレットは子供向けに作られているようだが、案外ここは大人だけで訪れても楽しめる観光スポットだったりするのかも知れない。


さて、小松駅まで行ったら、もぅひとつ見ておきたいスポットがある。それは当サイトの読者ならその存在を知っている人はそれなりにいると思うが、下写真の『土居原ボンネット広場』だ。489系クハ489-501が2013年に産業遺産として小松市にやってきて静態保存されている。

小松駅西口を出て右手の北方向へ線路沿いに約250m程行った場所にある土居原ボンネット広場に保存展示されている489系クハ489-501。運転台側からの写真が紹介されることが多いので、あえて妻面側の写真を載せてみた。
小松駅西口を出て右手の北方向へ線路沿いに約250m程行った場所にある土居原ボンネット広場に保存展示されている489系クハ489-501。運転台側からの写真が紹介されることが多いので、あえて妻面側の写真を載せてみた。
左側面後ろのドア付近に掲げられた案内板。なお車内の公開日は限られているため、下記を参照のこと。 http://kuha489-501.jp
左側面後ろのドア付近に掲げられた案内板。なお車内の公開日は限られているため、下記を参照のこと。
http://kuha489-501.jp

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。