駅前などにある鉄道系展示品を訪ねる(14)富山県・宇奈月界隈

鉄道が主役の旅スタイルを応援する見どころ案内

[場所]富山地方鉄道宇奈月温泉駅&黒部峡谷鉄道宇奈月駅

駅ナカや駅近の鉄道にまつわるオブジェや
モニュメントを訪ねる不定期シリーズです

前回アップで「黒部峡谷鉄道2022年運行開始」を報じたが、そこへ掲載した黒部峡谷鉄道の写真を昨年に撮った時に、合わせて富山地方鉄道宇奈月温泉駅&黒部峡谷鉄道宇奈月駅界隈に展示してあった保存車なども撮影したので、それらを「駅前などにある鉄道系展示品を訪ねる」の不定期シリーズで紹介していこう。
ということで、同シリーズが2020年11月8日アップ「(13)三重県・伊勢奥津駅」以来1年半ぶりにお目見えする運びとなった。

宇奈月温泉駅待合室に展示(?)されているヘッドマーク。
当サイトの読者なら、宇奈月温泉駅が富山地鉄本線の終着駅で、宇奈月駅が黒部峡谷鉄道本線の起点駅なことはご存知と思う。なので両駅の概要は省略させていただくとして、両駅の位置関係とかは各展示物などの紹介記事の流れでイメージして貰えたら有りがたい。

富山地方鉄道宇奈月温泉駅側

まずは富山地鉄宇奈月温泉駅側の展示物から眺めていこう。

宇奈月温泉駅の橋上駅舎ラッチ外には駅スタンプも設置されている。

■階段下の温泉噴水横
宇奈月温泉駅橋上駅舎から電鉄富山寄りの階段を下りると、正面に温泉噴水が設置された広場がある。

宇奈月温泉駅の橋上駅舎から電鉄富山寄りの階段を下りた先に温泉噴水あるが、この度はその先のベンチにご注目。
まぁ温泉噴水だけならヨソの温泉街にもあったりするが、なぜココでこの広場を紹介することになったかというと、その先に置いてあるベンチのサイドが電車の形をしていたからになる。
電車ベンチのカラーは富山地鉄の古参一般車の2種類の塗装(「だいこん」は微妙だけれども…)が施されている。

右は「かぼちゃ」カラーなのは一目瞭然だが、左はそうすると「だいこん」カラーであろう。
上のベンチの反対面。奥の車輌は黒部峡谷鉄道の客車。
正面2枚窓とオデコ丸ライト2灯で、「だいこん」カラーと「カボチャ」カラーが存在しているということはモチーフは富山地鉄10020形と思われる。

広場に立つ宇奈月温泉の説明板。宇奈月温泉が如何なる温泉かは、コレを読んでいただきたくお願いする。

■トロッコ電車を眺めながら足湯
上の項の温泉噴水は、淵の構造から一見すると足を入れたくなってしまう(そんな者はいないか…)が、富山地鉄宇奈月温泉駅には別に足湯があるので、この温泉噴水は足湯ではない(笑)。
本物の足湯は「駅の足湯くろなぎ」と言い、宇奈月温泉駅の車止め側プラットホーム端の先あって直接入れる。また、宇奈月温泉駅より黒部峡谷鉄道宇奈月駅へ向かう線路沿いの道路からもフリーで入ることができる。

駅の足湯くろなぎは、トロッコ電車を眺められるのはもちろん、富山地鉄の電車も巧く到着してくれれば眺められる足湯だ。
端から眺めると改札スルーに見えてしまうが、実は足湯の中間に柵が作られているので、ココから道路とプラットホームを行き来することはできない。
利用時間は、4月~11月 8時~18時、12月~3月 8時~16時。
「駅の足湯くろなぎ」は鉄道系展示物ではないが、黒部峡谷鉄道のトロッコ電車などを目前に眺めながら入れるのも面白いのではと思い、紹介させていただいた。

黒部峡谷鉄道宇奈月駅側

黒部峡谷鉄道の宇奈月駅は、富山地鉄の宇奈月温泉駅から東南東200mほどの位置にある。
この宇奈月駅前には実車が2輛ほど展示されていて、鉄道好きには見どころになっている。
と、ココまで書いておきながら、まずの紹介は宇奈月駅駅舎の東側トイレの先に飾られているEDR形電気機関車+ボハ1000形客車×3の模型。

模型のモチーフは前から、ED21号+ボハ形1071号+ボハ形1072号+ボハ1073号。
上写真の模型車輌の反対側。ちなみに機関車側が宇奈月方。
なんか高い所に居るいという設置スタイルなので、個人の感想になるが、模型車輌を間近に見られないのが残念な展示物ではある。
できたらだが、斜め上から眺めてみたい模型だと思う。

■駅舎正面のL型電気機関車EB形EB5号
宇奈月駅の切符売り場出入り口の対面に建つ黒部川電気記念館の前にL型電気機関車EB形EB5号が保存展示されている。

宇奈月駅駅舎側から眺めたEB5号。背後の建物は黒部川電気記念館。
EB5号の説明板。なんとカマは大正15年3月製造。
説明板によるとEB5号は1926年(大正15年)米国ジェフリー社製造で、それ以上の詳細も上の説明板を読んでいただきたい。

EB5号のバケット側。
動輪上スペースがバケット状なっている理由として、文中にココの上へ「人が…乗って、集電ポールを操作していました。」との説明が記されている。操作員が屋根もないこの環境で走行中ポイント通過ごとにトロリーホイールを架線から離線~ハメ込みを行っていたのかと驚ろかされる。

EB5号のキャブ側。

■駅舎南東80mほどの駐車場脇に居る凸型電気機関車ED形ED11号とハ形客車
前回アップの記事でJR北陸新幹線黒部宇奈月温泉駅&富山地方鉄道新黒部駅駅前広場に保存展示の凸型ED形ED8号を紹介したが、宇奈月駅前にも凸型ED形のED11号+ハ形客車ハフ10号が保存展示されている。

ED11号1エンド側で、こちらが欅平向きに連結した姿で展示されている。
凸型ED形は戦前製のカマで、同型機2両がまだ現役で活躍しているというから驚き。
ED11号に関しては、こちらも詳細は上の説明板を読んでいただくとして、記されていない事柄で、製造は1934年(昭和9年)~東洋電機なことを申し添えておく。それではED11号をグルッと眺めて回ろう。

ED11号1エンドの反対側面。朝顔カプラーなのがナロー鉄道の車輌という感じで嬉しくなる。
2エンド側で、コチラ側にはハフ10号が連結されている。
2エンド反対側面。右のスポーク輪軸を利用したベンチが楽しい。
凸型ED形はED9号・ED10号が今なお現役で、戦前製の電機がいまだ活躍していることが嬉しくなってしまう。なお、凸型電気機関車としては、さらにEDS形まで含めるとは3両が運用されている。
次は客車を眺めていこう。

ハ形客車は1925年(大正14年)製の貨車を、戦後に旅客車へと改造した車輌。一部の同形車が、職員専用とはいえ現役で活躍している。大正時代製の足回りの車輌が未だ走っていることは喜ばしい。
朝顔カプラーのアップ。
宇奈月のハ形客車はハフ10号。なんとコチラは1925年(大正14年)からの製造で、同形車輌にはいまだ現役で職員輸送に従事している車輛がいる。こぉ考えると物保ちの良い鉄道だと言えそうだ。

宇奈月駅周辺でトロッコ電車が走る姿が見られる場所も載せておこう

前回アップの黒部峡谷鉄道…運行再開の記事の写真は、宇奈月駅周辺にて撮影している。なので、せっかくだからその撮影場所も紹介しておこう。

■やまびこ展望台

上写真のED11号などが保存展示されている駐車場の段のもぅ一段上の段の東方奥に「やまびこ展望台」がある。ココに昇ると眼下に走りくる(上り列車の場合)トロッコ電車を眺めることができる。

やまびこ展望台から眺めた、宇奈月-柳橋 間の新山彦橋を渡る上りトロッコ電車。前から、EDR形×2+2500形(リラックス客車)×6+1000形(普通客車)×7。APS-Cにおける28mmレンズにて撮影。
やまびこ展望台への昇り口。
トロッコ電車が深山を走るシーンを、手軽に撮影したいなら、ぜひ訪れたい場所である。

■やまびこ遊歩道入口

新山彦橋を渡るトロッコ電車を真横から撮れる場所。

宇奈月-柳橋 間の新山彦橋を渡る上りトロッコ電車で、前から、EDR形×2+3100形(リラックス客車)×6+1000形(普通客車)×7(一部車輌はトンネルの中)。APS-Cにおける85mmレンズにて撮影。
上写真は新山彦橋を単独で撮ったアングルだが、ココには似たスタイルの上路式アーチ橋が架かっている。
こちらは1987年まで鉄道橋梁として使用していた旧・山彦橋だが、1988年シーズンから新山彦橋を供用開始した以後は遊歩道へ転用されている。

実は黒部峡谷鉄道本線を跨ぐ道路橋上からの撮影で、手前が遊歩道の旧・山彦橋、奥が鉄道橋の新山彦橋。写っているトロッコ電車は走りゆく下り列車。APS-Cにおける20mmレンズにて撮影。
ところで、この地点だがスグ先が立入禁止区域なので、深入りは禁物だ。

■おまけ

どうでもよいネタではあるが、上の写真を撮った地点の足下の橋桁フィンガージョイント(伸縮装置)脇のコンクリート部に百円ライターが埋め込まれている(笑)。

上写真を撮影していたら、足元にコンクリへ埋もれた百円ライターを発見(大笑)。
多分コンクリを打っている時に胸ポケットからポロッと落ちたモノと思われるが、そのままコテでならしてしまったのだろうか? プロの職人が気づかないハズはないので、主要構造部ではないため問題なしと考え(笑)、おそらく…(以下略)。

■釜飯の自販機
宇奈月駅の駅舎前に「河鹿」の釜飯の自販機がある。面白い物件と思ったので写真を撮っておいたモノだが、後日に検索したトコロ、全国的にも珍しいモノと判ったので、ココで紹介しておこう。

手前が釜飯の自販機。「河鹿」の文字が目印だ。
「河鹿」は宇奈月温泉駅前にて、半世紀に渡って営業を続けている味処で、釜飯やおでんなどが人気の店なのだそうだ。その同店がなぜ宇奈月温泉駅駅舎前に釜飯の自販機を設置したのかというと、自販機なら24時間稼働させられるため、朝6時台の始発電車に乗車する乗客に対応できるからとのこと。といいつつ、昼食時やトロッコ電車降車後のお土産としても売れているそうだ。
自販機の釜飯は13種類。価格は1,150円~1,450円。
河鹿の詳細の詳細は下記URLにて。
http://kazika.co.jp

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。