道北士別のモノコックバスが2022年の路線運行を開始

鉄道が主役の旅スタイルを応援する見どころ案内

[場所]JR宗谷本線 士別駅前北北東約300m士別軌道本社

北海道上川支庁の士別市にあるバス会社「士別軌道」が保有している、いまや全国的に貴重となった現役のモノコックバス『日野K-RC301-P 1982年式』が、2022年シーズンも路線バスとしての運行を、4月25日から開始した。
このモノコックバスは元々、隣町の和寒町所有の自家用バスだったが、1998年に士別軌道にやってきて、ワンマン機器などを搭載して路線バス仕様になり車番『82009』となった。ある意味、動態保存車といえる貴重なバス車輛だ

士別軌道の本社車庫にて。ココの日野K-RC301-Pは窓を横にスライドさせて開閉するタイプ。屋根上のマーカーはオレンジレンズを装備。非常口の後ろにルーバーを備えている。
キャッチコピーが「鉄道が主役の旅スタイル…」になっている点は、鉄道駅から歩いていける範囲の話題ということでお許し願いたい。
また、本来なら4月半ばまでにはお伝えしなくてはならなかった事柄も含んでいるが、諸般の事情により運行開始後の挙句に、さらにG.W中のアップになってしまったことは申し訳ない。
運行便2022シーズンは4路線に運行する。運行期間と運行路線、料金は下記の通り。
平日A中多寄線
第1回 2022年4月25日(月)~7月13日(水)のうちの月・火・水、9月12日(月)~10月12日(水)のうちの月・火・水。
士別9:40発→風連駅前10:34着/病院前10:40発→士別11:34着。
往復券1,100円/片道券550円。
平日B朝日線
第1回2022年4月28(木)~7月15日(金)のうちの木・金、9月15日(木)~10月14日(金)のうちの木・金。
士別12:00発→朝日12:30着/朝日12:40発→士別13:10着。
往復券1,800円/片道券900円。
土・日・祝 温根別スクール線
2022年4月23日(土)~10月16日(日)のうちの土・日・祝。
※ただし9月3日(土)・4日(日)はメンテナンスのため運休。
士別12:00発→南12線12:35着/南12線12:40発→士別13:15着。
往復券1,660円/片道券830円。
平日C川南大和デマンド線
2022年7月19日(月)~8月26日(金)の平日のみ、デマンド運行のため要予約。
往復券1,860円/片道券930円。
電話番号など詳細は下記URL参照。
www.s-kido.jp/monokokku/oshirase.pdf
モノコックバス運行カレンダー
士別軌道のモノコックバスの運行日および運行路線は下記URL参照。
www.s-kido.jp/monokokku/calender.pdf
なお「士別発は、士別軌道本社から出発します。」との一言も添えられているので、注意が必要だ。

士別軌道(北海道)の『日野K-RC301-P 1982年式』とは…

日野RC301は、1968年に登場したRC系の中で、RC300がエンジン出力をアップして1977年に登場したマイナーチェンジモデル。日野のモノコック車体の大型バスとしては最後の車種のひとつで、1982年に登場したスケルトン車体のHU/HT系と並行して製造されていたが、1984年に製造を終了した。
では、このバスの外観を眺めていこう。

JR宗谷本線 多寄駅前を走行する日野K-RC301-P。ボディは前中2扉車の都市内路線タイプながら、前面は観光タイプという珍しい組み合わせになっている。モノコックバスが、こうして道路を走っている姿が見られると、嬉しくなってくる。
JR宗谷本線 士別駅前に到着した日野K-RC301-P。リアには行先表示の窓はない。タイトルとの連続撮影。
リアのナンバープレートの上部には『RC』のエンブレムが取り付けられている。出自の証しだ。
この保存車両の型式名“K-RC301-P”の頭に付いている「K-」は、1979年の排ガス規制適合車になった1980年に加えられた文字で、「-P」はエアサス車を指している。
では、車内や銘板を見ていくことにしよう。

運転席にはワンマン用の機器を装備している。1998年に士別軌道にやってきた時に備えられたものだ。
車内の後ろ側の眺め。あたり前だが、2ステップ車のため車内はフラット。
前の出入口左側面に貼られた銘板。シャーシが「日野自動車工業」で、ボディが「日野車体工業」製なのが解る。
このバスを運行しているバス会社の『士別軌道』という社名の「軌道」という字にも興味を抱いた方がいるかと思う。
士別軌道は1919年(大正8年)設立の軽便鉄道会社だが、1959年(昭和34年)に軌道線全線を廃止して、バス・トラック会社になり、1988年には貨物運送事業を廃止して、現在の会社形態になっている。バス会社になっても創業時の社名を使用しているところにはコダワリを感じる。

士別軌道本社待合室に展示してある過去写真のうち、鉄道車輌が写っている一枚。
なお、本社車庫は外からも眺めることができるが、車庫内で写真を撮るにあたっては、士別軌道さんの許可を得て撮影している。

平日A中多寄線について…

運行路線のうち「平日A中多寄線」は 日向温泉経由 となっていて、国道40号を士別方面から走ってきたバスは、多寄駅前から曲がり西へと進路を取る。
国道40号にある多寄バス停は名寄方面への停留所で、中多寄線の多寄バス停は別にあるので、多寄駅前から乗ろうとした場合には注意が必要だ。
余談になるが、筆者は実のところ士別軌道のモノコックバスを訪ねたのは約5年前で、当時はJR宗谷本線 瑞穂駅の西北西1.5kmくらいの場所にあるバス停30線西3号7時50分発-士別駅前8時15分着の朝の片道1本のみで、宗谷本線の旭川発6:02の普通321Dで多寄駅まで行き、そこからバスに乗り換えた(いまは早くても士別9:40発なのでココまでの努力はいらない)のだが、「多寄」からモノコックバスに乗車する場合には士別軌道の停留所の他に道北バスの停留所もあるので「風連駅前」行のバスに乗る時にバス停には気をつけたい。

多寄駅前からモノコックバスの下り往路へ乗車する場合、このガングロ羊(サフォーク種)の待合所がある方が士別軌道の風連駅前行のバス停だ(当時)。
なお、上り復路の多寄バス停は国道40号にあるので見つけやすい。
路線図などは下記URL参照。
www.s-kido.jp/pdf/map01.pdf

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。