ナゼそこに他の鉄道路線と接続がないターミナル駅…筑豊直方

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路線の定義では終点駅だが、佇まいはまさにターミナル駅…

[場所]筑豊電鉄線 筑豊直方駅

鉄道路線の都市側ターミナル駅は大概の場合どこか他の鉄道路線などの駅(含む地下鉄・軌道・フェリー)と接続しているか、離れていても駅前広場1個分くらいの距離程度には隣接しているが、全国には都市部の街中にありながら他の鉄道路線などと全く接続or隣接していないターミナル駅がいくつかある。
その一つが、この度紹介する福岡県の筑豊電鉄線 筑豊直方駅 だ。

筑豊直方駅の末端を地平から見たトコロ。
筑豊直方駅に掲げられていた「ちくてつ沿線マップ」で、右下が北。JR筑豊本線・平成筑豊鉄道直方駅とは直線で約500mほど離れているのが判る。
上で「いくつかある」と記したが、「他の鉄道路線と接続がない都市側のターミナル駅」の候補はまだある。なので、その辺をまたいずれ不定期シリーズとして紹介していこうとは思っている。
なお、筑豊直方駅は正式には筑豊電鉄線の終点駅だが、起点の黒崎駅前(移転前)は元・西鉄北九州線の軌道路線の電停だったのと比して、筑豊直方駅は都市内に立派な高架線を構える頭端駅のため「都市部のターミナル駅」風と呼ぶ分には問題なしとの判断(筆者個人の感想です)から紹介の運びとなった。

筑豊直方駅に進入する電車から眺めた前面展望。左が1番線、右が2番線。
また異なる話になるが、起点駅ではあっても他の鉄道路線と接続していない駅として、JR弥彦線弥彦駅・JR筑豊本線若松駅・JR香椎線西戸崎駅などが挙げられる。だが、コレらはどちらかというと終着駅の趣き(筆者個人の感想です)なのでシリーズからは外させていただいている。

筑豊直方駅を訪ねる

筑豊電鉄線は、現在は黒崎駅前-筑豊直方を結ぶ16.0kmの鉄道路線だが、黒崎駅前-熊西 間0.6kmは2000年11月26日までは西鉄北九州線の軌道路線だった。その後2015年3月1日からは筑豊電鉄の鉄道路線となっている。
この度は、そんな経歴がある黒崎駅前から乗車して筑豊直方を目指すことにした。

筑豊直方駅の車止めの先に都市が広がっているが、他の鉄道接続駅は見当たらない。
筑豊直方駅のプラットホームは頭端式ホームを2面持つ、いかにもターミナル駅といった配線になっていて、コレが立派な高架線の上にあり、さらにこの高架線は途切れて、その先には都市の街並が広がっており、他の鉄道接続駅は付近には見当たらない、まさに「ナゼそこに他の鉄道路線と接続がないターミナル駅」といった、都会の中にポツンと佇む趣きのある駅構造になっている。ただ一つ、扱い上の定義では「終点駅」ということを除けば…。

■では車止め回りを眺めていこう
筑豊直方駅は、遠賀川をプレートガーダの鉄橋で渡って150mほどのスグの場所にある。このような位置関係から駅は高架構造にならざるを得ないが、その事情により高架線が車止めの先でプツリと完結した、いかにも地方私鉄のターミナル駅というスタイルになっている。

車止めの反対側からの眺め。1番線ホームには上屋などがない。
1番線はめったに使用されないらしいが、筆者が滞留中に3000形3004の試運転電車が入線してくれたので、載せておく。
普段に見ている車止めの後ろにもぉひとつ、レールを組んだ車止めがある。写真は2番線側から見たトコロ。
普段に見ている車止めの後ろ側。
後ろのもぉひとつの車止めを1番線側から見たトコロ。
普段に見る車止めと架線柱との関係。
2番線に電車が停まるとこのような感じ。車輛は3000形3008。3000形はこのスタイルで吊り掛け電車なのだ。
1番線ホームから眺めた車止め。その線路が途切れた先にはまさに都会の風景が広がっている。
2番線に停まる電車を1番線ホームから眺めたトコロ。車輛は3000形3008で、上々写真と同じ電車。
写真のキャプションで2番線ホーム側を主に発着に使用している点を、それとなく記してあるが、そんなメインに使っている方のプラットホームが2番線を名乗っているのは、筑豊電鉄線が山側より1番線と番号が振られているからになる。

■2番線側を見る
次は1番線ホームから2番線側を眺めていこう。

2番線ホームの上屋は2段になっている。左の上屋の中ほどに地平へと連なる階段の出入口が見える。
1番線ホームから眺めた、遠賀川橋梁方から2番線へ進入する電車。車輛は3000形3003。いまは別のカラーリングになっているらしい。もちろん吊り掛け電車である。
2番線ホームの上屋全景。中央やや右が階段への出入口。
プラットホームが低く、まるで路面電車の電停の、いわゆる軌道線の乗降場のようにも見えるが、筑豊電鉄線は全線れっきとした鉄道路線である。

■2番線ホームから階下の改札口へ
下車時に高架のプラットホームから階下の改札口へ降りる、もしくはその逆の乗車時に改札口からプラットホームへ昇る階段は2番線側のみの1本になる。

2番線ホームの遠賀川橋梁寄りからの車止め方の眺め。
2番線ホームの階段出入口には窓口がある。この日は閉まってはいたが…。
階段の上からの眺め。
階段の途中から地平方を眺めた光景。
なお、上で「改札口」と記したが、筑豊電鉄ではICカードも含めて基本的に車内精算のため、実のところラッチはない。駅構造のビジョンを伝えるために便宜上そう表現した点をお許し願いたい。

外観を眺める

まずは筑豊直方駅のプラットホームや線路がある階を眺めてきたが、ではそんな筑豊直方駅の外観をグルリと眺めていこう。

■高架線末端はあっさりスギ
筑豊直方駅の車止め側、いわゆる高架線末端はあっさりストンと完結したスタイルになっている。コレで近辺に他の接続する鉄道駅などがない終点駅(定義上)の姿なのだから畏れ入る。

階段は高架線に寄り添うように設置されている。
高架線端部を見上げたトコロ。
筑豊直方駅前の街並み。道路は県道27号直方芦屋線。
高架線端部の正面の眺め。バス停は「筑鉄直方」だが、バスは1日に数本しかこない。
高架線下にはテナントが入っている。
高架線はこの高さで遠賀川橋梁までつながっている。
ナゼこのような末端になっているか。それは元々の計画では、この先福岡市まで線路を延ばす計画があったからになる。この辺の経緯はココで記すと長くなるので、気になった方は「筑豊電気鉄道」などで検索していただけたらとお願いする。

■場内・出発信号機側を眺める
さて、上の「■では車止め回りを眺めていこう」の項でも少し述べているが、ナゼ筑豊直方駅は高架線の終点駅(定義上)になったのかのもぉひとつの地勢的な事情は、駅の場内信号機・出発信号機側の地形を眺めれば、なお解りやすい。

土手まで行く途中から眺めた筑豊直方駅の2番線側で、奥が車止め方。駅階段の設置の仕方が後付っぽい。
とりあえずは、筑豊直方駅を見上げた構図で載せたが、この撮影地点の背後には遠賀川の土手があって、迂回することにはなるが、登ることができる。

土手上からの眺めで、右奥にある筑豊直方駅へ進入する電車。車輛は5000形5001で、いわゆる超低床車。
土手上から眺めた筑豊直方駅。車輛は5000形5002。立ち位置的には柵の外にいて、そこから手を伸ばして撮っていることを一言添えておく。
土手上から眺めた遠賀川橋梁で、電車は5000形5001。上々写真の反対向きで、こちらが先の連続写真になる。
筑豊直方駅が高架線の末端駅になった理由のもぉひとつが遠賀川の土手の存在。鉄橋の線路面は当然に土手の高さ以上まで持ってこなくてはならないので、そこから150mほどの距離で地平へ下ろすことはまず不可能だからだ。
まぁ元々はこの先、福岡市までの延伸計画があったのだから、地平に線路を下ろすなんてことは当初から考えていなかったとは思うが…。


筑豊電鉄は、車輛が一見路面電車風なのでイマイチ話題になっていないが、いまや吊り掛け電車が主力の鉄道路線として貴重な存在になりつつある。
吊り掛け電車好きな方で黒崎や直方など近くを訪れた際には、3000形はぜひ乗っておきたい車輛といえそうだ。まぁ吊り掛け電車好きな方にはイマさらネタとは思うが…。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。