複線の下り線を逆走する上り列車

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[場所]嵯峨野観光鉄道 トロッコ嵯峨-トロッコ嵐山

タイトルを読むと何かとんでもない場所の紹介のように思えるが、種を明かせば(見覚えがある書き出しである)、信号的には双方向に走れるようになっている区間があるということ。場所は京都府にあるJR山陰本線(嵯峨野線)嵯峨嵐山駅→西へ約900mの下り線路で、走っているのは嵯峨野トロッコ列車になる。

トロッコ保津峡-トロッコ亀岡 間を走る嵯峨野トロッコ列車。左がトロッコ嵯峨方、右がトロッコ亀岡方。車輛は左からDE101104、5号車リッチ、4号車→1号車。
嵯峨野観光鉄道線の嵯峨野トロッコ列車は トロッコ嵯峨-トロッコ嵐山 間をJR山陰本線の線路を走っていることは当サイトの読者ならご存知と思う。

■まずはトロッコ嵯峨駅からの下り線を見ていこう
トロッコ嵯峨駅はJR嵯峨嵐山駅の南西側に寄り添うように別線として設置されている棒線終端駅で、プラットホーム亀岡寄り(西)端から亀岡方150mほどの分岐器にてJR山陰本線下り線と合流する。

トロッコ嵯峨駅で、奥がトロッコ亀岡方。右がJR嵯峨嵐山駅だが、構内は完全に分かれている。
JR嵯峨嵐山駅発車直後の後方展望で奥が京都方。JR駅からだと約200mほどの地点で山陰本線と合流する。分岐器の左がJR山陰本線、右が嵯峨野観光鉄道線。
嵯峨野トロッコ列車の亀岡方面行は推進運転で運行されていることは有名で、ある意味では嵯峨野観光鉄道線の名物にもなっているので、JR山陰本線下り線を走るその姿もお見せしておこう。

JR山陰本線 嵯峨嵐山-保津峡 間の下り線を走行する嵯峨野トロッコ列車。ヘッドライトが灯っているのが推進運転の証し。とりあえず右の信号機の存在も覚えておいてほしい。
上写真の場所、野々宮踏切からの嵯峨野トロッコ列車の後追い写真。テールランプが灯っているのが推進運転の証し。
せっかくなので、JR山陰本線下り線を走るJRの列車も載せて…と、思ったらKTR8000形使用の「特急はしだて」の写真を見つけたので、それを掲載してしまおう。JRの線路を走る京都丹後鉄道の車輛を嵯峨野観光鉄道の記事に使うと、チトややこしいかも(笑)。

上写真と同じ野々宮踏切からのJR山陰本線下り線を駆ける列車の後追い撮影。とはいえ車輛は京都丹後鉄道のKTR8000形ではあるが…。奥にトロッコ嵐山駅にてトロッコ嵯峨へ向けて発車を待つ嵯峨野トロッコ列車が見える。そして、上下線の間に渡り線がない点も覚えておいてほしい。
さて、上記トロッコ列車が乗り入れている区間だが、この間には上下線に渡り線がない。
では嵯峨野トロッコ列車の嵯峨方面行(上り)はどの線路を走っているのか?

■次はJR嵯峨嵐山→トロッコ嵐山 間の下り線を眺めていこう

JR山陰本線 嵯峨嵐山駅3番線からの下り亀岡方の前方展望。陸橋の下あたりで嵯峨野観光鉄道の線路と合流しているのが窺える。
信号機は左から「41出」、トロッコ嵯峨駅の屋根と被って見づらいが赤色現示が「51出」、そして緑色現示が「31出」、かなり先奥に中継信号機があって、手前の中継信号機は「△出」。ところで右の中継が進行現示になっているが、「31出」に従属しているワケではないと思われる(笑)。
それでは亀岡方へ進んでいこう。

野々宮踏切付近からの下り亀岡方の前方展望。上々写真の信号機の現示側はこのようになっている。彼方では嵯峨野トロッコ列車がトロッコ嵯峨へ向けて発車を待っているのが遠望できる。
上写真は下り電車からの前方展望で奥が亀岡方になる。
信号機は、左下が「本ト2出」、右上が「本本2出」で、まぁ読んで字の如くなので、どっちの線路への現示なのかは一目瞭然だろう。
それと下には、上々写真の先奥に写っていた中継信号機のアップを載せておこう。

上地点よりやや京都寄り天竜寺踏切からの同地点の眺め。右の中継信号機が上々写真奥の中継信号機になる。電車は211系下り。
ちなみに、左の211系が横を通り過ぎた直後に中継が「進行」から「停止」現示に変わったので「本本2出」に従属していると思われる。
上々写真の位置から亀岡方へ250mほど進んだ地点からの前方展望が下の写真になる。

JR山陰本線下り線からの前方展望で眺めた嵯峨野観光鉄道トロッコ嵐山駅。
コレで分岐器がどのように配線されているかは解ってもらえたと思う。ただし信号機的な興味はコチラ側ではなく反対向きにあるだろう。
ということで、下り電車からの後方展望を載せておこう。

というわけで、下り列車から京都方に後方展望で眺めた嵯峨野観光鉄道トロッコ嵐山駅。左はJR山陰本線上りの中継信号機。右の赤色現示は嵯峨野観光鉄道の信号機で「5場」。
信号機は左が中継で、右は「5場」。とりあえずコレを覚えておいていただいて、次へいこう。

■トロッコ嵐山駅からトロッコ嵯峨駅へ
トロッコ嵐山駅は上々写真の小倉山トンネルの上にある。

トロッコ嵐山駅駅舎。
なので、そこからなら信号機「5場」が見下ろせるのではないかと思い、行ってみると、やはり眺めることができた。
信号機絡みの一連写真3枚を以下に並べてみよう。

JR山陰本線下り線を駆ける211系電車。当然だが、「5場」は赤色現示。
そして「5場」が黄色現示に変わり、嵯峨野トロッコ列車が発車していく。
左の中継信号機は「停止」現示のままなので上り線の信号機に従属しているものと思われる。
フッと思ったのだが、上の信号機が「5場」ということは、ここまでJR嵯峨嵐山駅の場内ということになるのだろうか。真実は別の研究にお任せしよう。
そしてJR山陰本線下り線を逆走(正確には場内…?)する嵯峨野トロッコ列車の勇姿をお見せしよう。

JR山陰本線下り線を逆走(正確には場内?)する嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車。ヘッドライトが灯っているのがその証し。
JR山陰本線下り線を逆走(正確には場内?)する嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車。テールランプが灯っているのがその証し。左の中継信号機は「停止」現示なので、コレはJR山陰本線上り線に従属しているものと思われる。
嵯峨野観光鉄道線トロッコ嵯峨駅に亀岡方から到着する嵯峨野トロッコ列車。
余談になるが、7枚上の写真でトロッコ嵐山駅の駅舎前にある水槽のようなモノが置かれているのが窺えるが、コレは「森林鉄道の秋」というジオラマ展示で、中に林鉄の風景が作られている。せっかくなので、その写真でこの項を〆ることにする。

嵯峨野観光鉄道線トロッコ嵐山駅舎前に展示されている「森林鉄道の秋」と題したジオラマ。
嵯峨野トロッコ列車は、乗車それ自体が面白いし、訪れるのに一般人(笑)を誘いやすい。そんなロケーションながら、鉄道を主役に旅している者からすると、信号機を眺めているだけでも趣味的には興味が尽きないスポットだろう。

トロッコ嵯峨駅も見ドコロたくさん

嵯峨野トロッコ列車に乗車or下車する起点終点は、大方はトロッコ嵯峨駅になると思う。
この駅がある洛西の嵐山や嵯峨野は、その一角自体が京都の一大観光地なので人気スポットが多く、 それらが目立ちすぎている(笑)中に位置しているためかトロッコ嵯峨駅はあまり紹介される機会は少ないが、実は行楽地として見るなら、ある程度の施設が揃っている。

嵯峨野観光鉄道線トロッコ嵯峨駅駅舎。左隣には「19世紀ホール」というミュージアムが建っててる。
ましてJR嵯峨嵐山駅に直結しているという地の利の良さがあって訪れやすいこともあるので、トロッコ列車の駅としてだけではなく、この駅を目的地とした旅もイイのではないかと思ったので、この際だからココで紹介しておこう。

トロッコ嵐山駅を入るとこのような感じでスペースが広がっている。
なんと野宮神社「斎宮行列」御所車(牛車)も展示されているのだ。
自販機はトロッコ1号車前面風。
ジオラマ京都JAPANの入口。手前にはNゲージのミニジオラマがある。
そのNゲージミニジオラマ。
上々写真に「ジオラマ京都JAPAN」の看板が大きく掲げられているのが見えるが、コレはこの奥が鉄道ジオラマになっていて、入場は有料だが見学することができる。
詳細はアレコレ文章を書くよりはパンフレットを見ていただいた方が解りやすいと思い、それを載せておく。

せっかくなのでパンフレット裏表を載せておこう。複写するにあたり案内所の方のお許しは得ています。

なお、パンフレットには出ていないが、模型運転には別途施設利用料が必要なのと、レンタルレイアウトは現在サービスを中止しているとのことだ。
ジオラマ京都JAPAN
営業時間:9時~17時(営業日により異なる場合がある)
営業日:トロッコ列車運行日
休業日:トロッコ列車休業日
https://www.sagano-kanko.co.jp/diorama.php

トロッコ嵯峨駅の隣には「19世紀ホール」という、SLなどを展示している施設があるが、この度は誌幅の関係から、掲載を見送りさせていただいた。いずれ紹介する予定なので、お許し願いたい。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。