山口県・長門市駅0番ホームの線路に並ぶ謎の赤鳥居群

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[場所]JR山陰本線・美祢線 長門市駅

今年の梅雨は、7月初旬の豪雨により九州や山口県に甚大な被害をもたらした。さらにそんな梅雨が明ける前から猛暑の日々が始まって、なんか季節感覚のペースが乱れてしまった感がある。けれども7月20日に山陰山陽・近畿・東海の梅雨明けが発表され、以後21日に北陸・四国、22日に関東甲信・東北、23日に南九州の梅雨が明けて、いよいよ真夏本番のシーズンが到来した。再びヤッてきた猛暑の中で、涼しい写真の記事を前回に引き続き書かせていただく。

プラットホームわきの線路上に立ち並んでいる謎の赤鳥居群。
この度紹介する涼しそうな写真は山口県のJR西日本・長門市駅0番線ホーム(使用停止中/以後略)の線路に並ぶ赤鳥居20基で、雪が薄らと積もる光景が暑気払いになるかなと思い、選ばせていただいた。
実のトコロ、この長門市駅の赤鳥居群を7月中旬の暑気払いネタとして紹介しようと写真を用意してあったのだが、2023年6月30日の梅雨末期の集中豪雨によりJR山陰本線 長門粟野-阿川 間の橋脚傾きと、JR美祢線 四郎ヶ原-南大嶺 間の橋脚流出により、山陰本線が長門市-小串 間、美祢線が厚狭-長門市 間で列車の運転を取りやめバスによる代行輸送を行なっているため、ある意味で被災地に近く不通区間に含まれている長門市駅の赤鳥居群の紹介は来年へ持ち越そうと決断していた。

JR西日本「山陰本線 長門市駅~小串駅間運転取りやめに伴う代行バスの時刻表等のお知らせについて」
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/230703_00_press_saninbus_1.pdf
JR西日本「美祢線 厚狭駅~長門市駅間運転取りやめに伴う代行バスの時刻表等のお知らせについて」
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/230703_00_minesen_daikobus.pdf

けれども先日の7月15日に、熊本地震により一部区間不通だった南阿蘇鉄道が7年3ヶ月ぶり全線運転再開の各メディアによるニュースを視るにつけ、この度の豪雨の被災区間を含む長門市駅の、赤鳥居群は「今だからこそ紹介する意味があるのでは…」と考えを改め、エールを送る目的で、このタイミングにて掲載することにした。

南阿蘇鉄道のトロッコ列車。画像提供:大井川鐵道
上写真は、当サイト2023年6月20日アップ「大井川本線…大鉄の話題」の記事中に掲載した写真の流用になる。大井川鐵道もまた大井川本線 家山-千頭 間が2022年9月23日深夜~24日未明に沿線に降った大雨により不通になっており同区間は代行バスによって運行されている。そのような関係から2023年9月22日(金)~24日(日)間に、大鉄アドバンス静岡ツアーセンターの企画により南阿蘇鉄道、くま川鉄道などを訪ねるツアーが催行予定とのこと。そんな話の流れでこの写真を掲載させていただいた。

大鉄アドバンスの同ツアーの詳細、および「予約フォーム」へのリンクは下記URLにて。
https://travel.daitetsu-adv.co.jp/sstsp2/

前置きが長くなってしまった。
さて、長門市駅の赤鳥居群の紹介記事に入ろう。

長門市駅0番線の赤鳥居群

長門市駅は海(北西)側に駅本屋が建ち、その本屋側1番線プラットホーム萩・仙崎寄り(北東方)先の反対面にある頭端ホームが0番線になる。

手前が1番線で、右が萩・仙崎寄り(北東方)。奥に赤鳥居群が見える。
鳥居群が立ち並ぶ0番線は頭端ホームになっている。
0番線の車止め方の眺め。左のキハ40系は奥がキハ47形で、手前がキハ40形。
ちょっと古い話になるが、筆者が日本全国の鉄道・軌道全線完乗に凝っていた1985年頃に、長門市駅から北東に分岐している仙崎支線へ乗車した時はこの0番線からキハ40系で乗車→到着したと記憶している。

0番線の線路の先には樹木が生えている。
いまとなっては0番線の線路の先に樹木が立っていたりと、このプラットホームに列車が発着していた往時を想像しずらいし、ましてや線路に赤鳥居群が立ち並んでいるのだから、もぉこの0番線における列車の発着はないモノと思われる。
ところで、上述の仙崎支線の終着駅 仙崎駅だが、当サイト2021年2月27日アップの前篇・2021年3月1日アップの後篇にて2度ほど紹介していたりする。

山陰本線仙崎支線の終着駅仙崎駅に立っている案内板。
特に後篇では、そんな仙崎の有名な詩人である「金子みすゞ」サンの詩を大々的に紹介している点を申し添えておく。

■ナゼ長門市駅に赤鳥居群があるのか?
0番線の線路上の赤鳥居は20基が立ち並んでいる。京都伏見のお稲荷様の千本鳥居とまではいかないが、それでもこの線路上の赤鳥居群は圧巻の光景であろう。

線路を跨ぐように立つ赤鳥居は貫が貫通した明神系で、額束があるタイプ。
ではナゼ赤鳥居群が長門市駅0番線に立ち並べられたのか?…赤鳥居群に由縁のある場所がドコか近くにあって、それがモチーフになっていることは想像できるだろう。そのヒントは駅前広場 仙崎・萩(北東)側にあった。

長門市駅の駅前広場で左が萩・仙崎(北東)方。SL動輪の向こうにイラストを描いた鉄道コンテナが見える。
上写真のコンテナのアップ。
駅前広場の仙崎・萩寄り(北東側)には鉄道コンテナ両側面開き19D形式が3個置かれ、それらの側面・妻面に様々なイラストが描かれているのだが、このうち一つの側面(開戸側)に千本鳥居が描かれいる。コレが0番線の赤鳥居群のモチーフなのは一目瞭然なので、似た景色をグーグルマップにて探したトコロ、長門市駅より西北西10kmほどの場所に、朱塗りの千本(とはいっても一二三基/以後略)鳥居が海岸段丘に立ち並ぶ「元乃隅神社」(旧称・元乃隅稲成神社)を見つけた。

元乃隅神社は朱塗りの鳥居群で注目の神社。お社や鳥居などの写真が無いので、人丸駅の駅名標にてお許しあれ。右のプレートは金子みすゞサンの詩。
ということで、長門市駅0番線の赤鳥居群は元乃隅神社の千本鳥居がモチーフなのが窺われ、あれこれ調べたトコロやはりそうであった。
長門市駅の赤鳥居群を建てたのはJR西日本長門鉄道部で、2020年2月に建立されたとのこと。鳥居が20基なのは先述したが、その間隔は1.5mで、奥(仙崎・萩方)へ行くにつれて3cmずつ高くしてあるそうだ。
それでは、この際だから赤鳥居群脇の鉄道コンテナに描かれたイラストのうち、鉄道車輛のイラストもお見せしておこう。

左イラストの車輛はトワイライトエクスプレス瑞風、右イラストの車輛は〇〇のはなし。
左のトワイライトエクスプレス瑞風は当サイトの読者には説明不要であろう。右の列車の「○○のはなし」は、山陰線西部を巡る観光列車で、2017年8月5日から運転が開始された。

■観光列車「〇〇のはなし」も運転取りやめ中
「○○のはなし」はキハ47形7000番台2両編成の観光列車で、[往路]新下関→下関→東萩-[復路]東萩→下関→新下関、の行程で、主な土曜・休日に運行している。

観光列車〇〇のはなし。これまた実車の写真が無いので、長門市駅の駅名標にて失敬。左のプレートは金子みすゞサンの詩。
だが、アップ日時点では7月上旬の豪雨による一部区間不通の関係で、当面の間、運行を取りやめている。
とは言え、いずれ運行は再開されると思うので、「○○のはなし」のJR西日本のサイトからのURLを下記に記しておこう。
https://www.jr-odekake.net/railroad/kankoutrain/area_hiroshima/marumaru_no_hanashi/
なお、〇〇のはなし は阿川駅に、往路14分、復路11分停車する。
それだけ停車するのだから、この駅に何かがあるのだろう…と気になるが、ナント「小さなまちのKiosk Agawa」という店がある。

阿川駅1番線プラットホーム脇に建つ小さなまちのKiosk Agawaの外観。
営業日は土・日・祝日で、営業時間は11時~16時半と、まるで〇〇のはなしに合わせたような開店時間になっている。
せっかくなのでAgawaのHPのURLを載せておこう。
https://www.agawa1928.com/

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。


[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。