JR常磐線 不通区間を訪ねてみた

[場所] JR常磐線 竜田-原ノ町・相馬-浜吉田

常磐線の不通区間を訪ねてみました

2015年6月時点での常磐線の不通区間は2区間あり、そのうち、浜吉田-相馬間は山側にルートを変更して、2017年春の復旧を目指して工事真っ盛りであり、現時点で運行中の相馬-原ノ町間からその南側、原ノ町-小高間は2016年春、小高-浪江間は2017年春、そして帰還困難区域を挟んだ富岡-竜田間は2018年春の復旧を目指して、それなりに工事が進展中である。
なお、今回は常磐線を北側から辿ったため、区間の表記は北->南に統一させていただいた。また、日々変化がある区間であるため、撮影した年月日が2015年6月18~19日であることも記しておく。

浜吉田駅に到着した、701系使用の仙台駅発普通。手前が南側東京方で、ここから先は長らく列車が走行していないためレールが錆びてしまっているのが解る。しかし、道床の整備はしっかり行われているようだ。
浜吉田駅に到着した、701系使用の仙台駅発普通。手前が南側東京方で、ここから先は長らく列車が走行していないためレールが錆びてしまっているのが解る。しかし、道床の整備はしっかり行われているようだ。

JR東日本 仙台支社 2012年3月5日のプレスリリースによる、浜吉田-駒ヶ嶺間の新ルート。宮城県山元町と福島県新地町が市街地の一部を内陸に移すまちづくり計画案を作成したことを受けて、延長14.6kmの新ルートを計画したとのこと。
JR東日本 仙台支社 2012年3月5日のプレスリリースによる、浜吉田-駒ヶ嶺間の新ルート。宮城県山元町と福島県新地町が市街地の一部を内陸に移すまちづくり計画案を作成したことを受けて、延長14.6kmの新ルートを計画したとのこと。

浜吉田駅からの東京方向の眺め。錆びてしまったレールが南へ遥かに続いている。
浜吉田駅からの東京方向の眺め。錆びてしまったレールが南へ遥かに続いている。

山下駅の移設建設地点を遠望。高架線で建設されており、移設駅の周辺には復興住宅が建ちつつある。
山下駅の移設建設地点を遠望。高架線で建設されており、移設駅の周辺には復興住宅が建ちつつある。

坂元-新地間に姿を見せた高架線。それを海側から東京方向を眺めたところ。ちなみにタイトル写真はこの地点から反対向きの、海側から仙台方向の眺め。
坂元-新地間に姿を見せた高架線。それを海側から東京方向を眺めたところ。ちなみにタイトル写真はこの地点から反対向きの、海側から仙台方向の眺め。

上写真反対側面の山側から東京方向を眺めた建設中の高架線。
上写真反対側面の山側から東京方向を眺めた建設中の高架線。

新地-駒ヶ嶺間の既存路線から新ルートに切り替わる地点の山側よりの眺めで右が東京方向。計画案では左の橋のさらに左手、仙台寄りに新地駅が移設されるらしい。
新地-駒ヶ嶺間の既存路線から新ルートに切り替わる地点の山側よりの眺めで右が東京方向。計画案では左の橋のさらに左手、仙台寄りに新地駅が移設されるらしい。

新ルートとなる浜吉田-相馬間

浜吉田-相馬間は、津波の被害が特に大きかった区間ということもあり、浜吉田-駒ヶ嶺間は、宮城県山元町と福島県新地町が市街地の一部を陸側に移転するまちづくり計画案の新規造成工事に合わせて新ルートを山側に新設し、これにより山下、坂元、新地の3駅も移設する計画である。訪れてみると、この区間は現在、従来とは全く違う場所に高架線や切り通しを造る工事が真っ盛りであり、ルートや駅位置はすでに確定していることが窺えた。
将に復興への鎚音という光景が見れて、頼もしいかぎりだった。
なお余談だが、鉄道線は北側から浜吉田駅まで運行しているが、鉄道線連絡の相馬駅行代行バスの始発駅は亘理駅になっており、浜吉田駅に寄らない便もあるので、もし訪れようと思っている方は、お間違えのないように。

相馬駅前で発車を待つ代行バス。ちなみに、利用する場合には仙台方の始発は亘理駅である点には注意が必要。
相馬駅前で発車を待つ代行バス。ちなみに、利用する場合には仙台方の始発は亘理駅である点には注意が必要。

相馬駅から仙台方向を望む。レールは錆びているとはいえ、新品に取り替えられており、バラストも入れ替えられている。
相馬駅から仙台方向を望む。レールは錆びているとはいえ、新品に取り替えられており、バラストも入れ替えられている。

追記:浜吉田-相馬間は2016年12月10日に運行を再開しました。

原ノ町-小高間の復旧は2016年春

原ノ町-竜田間では、途中に小高駅に立ち寄ってみたが、除草はもちろん、バラストの入れ替えなどの工事も行われており、復旧が近いことを窺わせてくれた。資料によれば、原ノ町-小高間の復旧は2016年春と、先に紹介の浜吉田-相馬間より早いのだから、当たり前といえば当然といえる。
また、小高駅の南側もバラストの入れ替えなどの工事が進行中だったが、列車がこないため工事がしやすいこの時期に、線路をベストな状態に整備しようとするのはもっともなことだと思う。

原ノ町駅南側にある踏切からの原ノ町駅構内の眺め。写真中央の電留線には、地震時に閉じ込められたのであろう651系電車と415系1500番台電車が窺える。
原ノ町駅南側にある踏切からの原ノ町駅構内の眺め。写真中央の電留線には、地震時に閉じ込められたのであろう651系電車と415系1500番台電車が窺える。

原ノ町駅南側にある踏切より東京方向を眺めた光景。線路の先は雑草に覆われているが、小高駅までは2016年春に復旧する予定とのことなので、まもなく線路の整備が始まることだろう。
原ノ町駅南側にある踏切より東京方向を眺めた光景。線路の先は雑草に覆われているが、小高駅までは2016年春に復旧する予定とのことなので、まもなく線路の整備が始まることだろう。

小高駅の駅舎は、屋根や側壁の修理が行われており、復旧が近いことを窺わせてくれた。
小高駅の駅舎は、屋根や側壁の修理が行われており、復旧が近いことを窺わせてくれた。

小高駅には軌陸車などの工事用車輛が留め置かれていた。レールはやはり新品に交換されており、バラストも入れ替えられている。
小高駅には軌陸車などの工事用車輛が留め置かれていた。レールはやはり新品に交換されており、バラストも入れ替えられている。

小高駅南側にある踏切からの東京方向の眺め。こちらは2017年春の復旧予定だが、レール交換やバラストの入れ替えがすでに行われていた。
小高駅南側にある踏切からの東京方向の眺め。こちらは2017年春の復旧予定だが、レール交換やバラストの入れ替えがすでに行われていた。

追記:原ノ町-小高 間は2016年7月12日に運行を再開しました。

竜田駅 レールは草むらの中へ

そして締めには竜田駅に寄ってみた。駅北側端に、車止めとしての枕木を置いたような光景を期待していたが、東京方面から来たレールは、何の表示もないまま、草むらの中へと続いていた。
東京駅に直結し、北千住-取手間には複々線を擁する超過密路線の行き着く先が、何の閉鎖物もないままに密林の中(表現をやや誇張しています)へスーッと消えていく様は、不思議な気持ちにさせてくれる。
しかし考えてみれば、ここは不通区間であり、車止めなどを設置してしまうと、利用者に将来の希望が断たれたような錯覚を抱かせてしまう危険があるので、この形がベストなのかも知れない。

竜田駅前に立つ代行バスのバス停ポール。原ノ町-竜田間ノンストップで、1日2往復運行されている。
竜田駅前に立つ代行バスのバス停ポール。原ノ町-竜田間ノンストップで、1日2往復運行されている。

竜田駅南側にある道路跨線橋より望んだ竜田駅構内。2番線のレール上に置かれた枕木は、線路端を示しているわけではなく、発着番線が3番線を使用しているため1番線・2番線の間に渡り板が架けられているので、そこに列車が誤進入するのを防ぐための物のようである。
竜田駅南側にある道路跨線橋より望んだ竜田駅構内。2番線のレール上に置かれた枕木は、線路端を示しているわけではなく、発着番線が3番線を使用しているため1番線・2番線の間に渡り板が架けられているので、そこに列車が誤進入するのを防ぐための物のようである。

竜田駅北側にある踏切より仙台方向を望んだ光景。線路端を示す物や標識はなく草蒸した中に線路が伸びている。この地点から先に立つ架線柱からは架線が外されており、復旧がまだまだ先であることを感じさせる。
竜田駅北側にある踏切より仙台方向を望んだ光景。線路端を示す物や標識はなく草蒸した中に線路が伸びている。この地点から先に立つ架線柱からは架線が外されており、復旧がまだまだ先であることを感じさせる。

常磐線がなるべく早く全通してくれることを、心から願っています。


[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。

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